北朝鮮で開かれた朝鮮労働党第9回大会において、金正恩総書記は、経済不振や自然災害への対応の遅れを巡り、幹部の「怠慢」と「無責任体質」を厳しく糾弾した。自らの政策判断には一切触れず、現場に責任を押し付ける姿勢は、国民にとって既視感のある光景であり、多くは冷ややかな視線を向けているはずだ。
その背景として想起されるのが、2023年8月の南浦市干拓地冠水被害をめぐる金氏の現地視察だ。豪雨で堤防が決壊し、広大な農地が水没した現場で、金氏は「これは自然現象による災いではなく、人災だ」と断じ、同行した幹部らを「政治的未熟児」「知的低能児」「官僚のやから」などと罵倒。朝鮮中央テレビは、金氏が指を突きつけ、幹部を怒鳴りつける様子をそのまま放映した。デイリーNKの現地情報筋によれば、当時、住民の間では「国家レベルの災害が起きるたび、責任を現場に押し付けている」「治水やインフラ整備を怠ってきたのは中央ではないのか」といった批判が広がった。現場幹部とて、突発的な豪雨と堤防決壊を完全に防げるわけではなく、「責任追及の前に、国が何をしてきたのかを省みるべきだ」との声も上がった。
金氏が内閣総理を名指しで非難したことにも、同情論が強かった。
(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導)
総理は頻繁に地方視察を行い、現場指導に奔走する姿が知られており、「彼は悪くない。党中央の決定を貫徹するために心身を削ってきた幹部」と評価する住民も少なくない。それだけに、「普段の努力を無視して、その場の感情で怒鳴りつけた」と受け止められた。
一方、幹部への厳罰を求める声も存在する。北朝鮮では、ノルマ未達や失策が即更迭や降格、地方追放に直結するため、虚偽報告が常態化している。過度な忠誠競争の中で、住民への負担を強め、私腹を肥やす幹部も後を絶たない。住民からは「この機会に幹部の体質を正すべきだ」との意見も出ている。
