北朝鮮の朝鮮労働党第9回大会で、党中枢の大幅な世代交代が断行された。事実上の「公式序列2位」とされてきた崔龍海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長も、党中央委員および候補委員の名簿に残れなかった。

崔龍海は、金正恩総書記の祖父・金日成主席と共に抗日パルチザン闘争を戦ったとされる崔賢(チェ・ヒョン)元人民武力部長の息子だ。北朝鮮においてパルチザン人脈は特別な地位にあり、「赤い貴族」とも呼ばれる。崔龍海はその象徴とも言える存在だが、特権を振りかざす極悪な所業でも有名だった。

崔龍海は1989年、朝鮮社会主義労働青年同盟委員長として金正恩の父・金正日総書記の信任を得て「飛ぶ鳥も落とす」威勢を誇った。

1990年代前半、崔龍海は「宣伝隊」を組織し美貌の女性を選び出す。対外的には青年同盟の広報部隊とされたが、実際は自身の欲求を満たすための「喜び組」だった。

後に党中央委員会の幹部思想闘争で公開された内容によれば、崔龍海の振る舞いは度を越して行き、その猟奇的欲求を満たすため宣伝隊所属のある女性に対し歯を全て抜くよう要求したという。崔龍海は歯を1本抜くごとに巨額の代価を提示した。歯を全て抜けば入れ歯も準備すると約束した。実際にこの女性は歯を全て抜き、崔龍海からの要求に応じた。(参考記事:女性少尉を性上納でボロボロに…金正恩「赤い貴族」のやりたい放題

当時を知る脱北者は「崔龍海の威勢は『人を殺しては生き返らせるほど』と言われた。宣伝隊で彼の要求に逆らえる女性はいなかった。逆らえばどんな処罰でもあり得ただろう」と話した。

1998年、崔龍海が収賄および不法外貨所持の疑いで委員長を解任され、連座した貿易機関の幹部が次々と粛清された。ほかに青年同盟の幹部と宣伝隊の女性ら数百人が政治犯収容所に送られた。

しかし事件の当事者である崔龍海は、労働現場での「革命化」処分を受けたものの復権を果たし、のうのうと特権をむさぼり続けたのである。