北朝鮮当局が全国のすべての公共機関、工場、企業所の敷地に芝生を造成するよう指示していたことが分かった。深刻な食糧不足に直面する住民の間では「今は芝生どころではない」と強い不満と戸惑いの声が広がっている。ラジオ・フリー・アジア(RFA)が22日、現地情報筋の話として伝えた。

咸鏡北道の住民によると、道党委員会は今月、「芝生植栽」を称揚する金正恩総書記の「偉大性教育資料」を配布し、全国的に芝生づくりを一般化する方針を示した。教材では、金氏が2012年9月、国家運営を論じる中で芝生植栽の重要性を提起したことが強調され、その「試験圃田方式」に基づく具体的な栽培方法まで指示されたという。土地を30~40センチ掘り下げ、土を焼いて細かくしてから芝を植えるという手間のかかる方法だ。

しかし、参加者からは「食糧難の最中に芝生とは何事か」「人が食べられない草を植える余裕はない」と反発の声が相次いだ。

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住民は「工場の空き地や塀の下には、豆やトウモロコシ、ジャガイモなどの作物を植え、従業員で分け合ってきた。昨年は多くの工場がこうした自助努力で飢えをしのいだ」と語る。芝生造成は、そうした貴重な耕作地を奪いかねないと不満を募らせている。

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平安北道の別の住民も「会議の場は一瞬で冷え込んだ。深く土を掘る体力も、土を焼く燃料もない。腹が満たされてこそできる作業だ」と語り、「どの工場や機関でも、わずかな空き地に作物を植えているのが現実だ」と指摘した。

韓国・統一研究院の趙漢範(チョ・ハンボム)上級研究委員は、金正恩政権の政策決定の特徴について「極めて独善的で即興的だ」と分析する。地方発展政策や工業振興策も、党大会の正式決定を経ず、金氏の場当たり的な指示で拡大されてきたという。芝生造成も、留学経験のある金氏が海外の景観を北朝鮮に持ち込もうとする意図が背景にあるとしつつ、「生活実態を無視した指示は、生産性の低下や住民生活へのさらなる負担を招くだけだ」と批判した。

住民の間では「当局は『人民第一主義』を掲げながら、肝心の食糧問題を顧みない」と失望が広がっており、現場との深刻な乖離が浮き彫りとなっている。