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鉄道は、自動車や自転車などの交通手段に比べて、事故発生率が非常に低い。だが、それはあくまで日々の維持管理がしっかりと行われていることが前提だ。

北朝鮮では、かつて日本の植民地時代に敷設された鉄道インフラが多く残っており、設備の更新がほとんど進んでいない。そのため、老朽化が著しく、これまでにも数百人、数千人単位の犠牲者を出す大事故が繰り返されてきた。

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そんな大惨事に発展しかねないインシデントが、つい最近も発生したと、デイリーNKの内部情報筋が伝えている。

事件が起きたのは、金日成主席の誕生日(4月15日、太陽節)を祝う連休明けの今月18日。満浦(マンポ)線の球場(クジャン)駅と北薪峴(プクシニョン)駅の間にある分岐点で、満浦方面に向かう列車と、別の列車が正面衝突しかけた。

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幸いにも、分岐駅の当直電気設備員が危険を察知して、緊急警報ボタンを押し、線路切り替え装置を作動させたことで、駅構内での衝突はギリギリのところで回避されたという。

この区間では過去にも重大事故が起きている。2020年11月には、列車が川沿いを走行中に脱線し、600人もの死傷者を出す大惨事となった。

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今回の状況は、本来、機関車が満浦行き列車の先頭に連結されるはずだった。しかし、駅構内の通信指令の不備により、機関車がまったく別の線路に進入してしまったことが原因とされている。

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ただし、後に行われた調査では、指令所、信号保安室、操車場作業班の間で3回にわたる有線電話と無線通信が正確に行われていたという証言も多く、最終的には「勤務交代のタイミングで引き継ぎに問題があった」という結論が下された。

さらに会議では、信号設備を含む統合制御盤の3系統回線が繰り返しダウンと復旧を繰り返していたという不具合も報告された。これは太陽節を前にした定期点検の際に「軽微な不良」と判断され、放置されていたことも明らかになった。

价川(ケチョン)鉄道局は今回の事態を受け、操車場の責任者、当直機関士、指令所の班長を一時的に職務から外し、会議終了後には鉄道省へ「技術的な誤作動による線路混線の可能性に関する報告書」を提出したという。

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情報筋によると、「衝突が実際に起きたわけではないため、鉄道省からの追及は比較的軽微にとどまる見通し」とされており、これを機に「設備稼働状況の随時点検」が再び強調されているという。

鉄道局の職員たちは、「もしこの事故が太陽節当日や、その翌日の祝日に起きていたら、みんな命を失っていたかもしれない」と胸をなで下ろし、「まるで寿命が10年縮んだようだった」と語っている。

(参考記事:また死亡事故発生、北朝鮮「血塗られた大型事故」の歴史

現場では今もなお、「次はいつ同じような事故が起こるかわからない」という不安が広がっている。技術担当者の間では、「輸送指令は一元化された声で下されるべきだが、現場ではその“唯一の指揮体制”が機能していない」「今回は引き継ぎの甘さで済んだが、今後の事故防止に向けた対策は急務だ」との声が上がっている。

情報筋は最後に、「(朝鮮労働)党創建80周年という節目の年に、大事故で処刑台に立ちたい者などいない。だからこそ、皆で気を引き締めようという雰囲気が広がっている」と語った。そして、「今回の件を“なかったこと”にするのではなく、“いつでも起こりうる事態”として真剣に向き合うべきだという空気が強まっている」と締めくくった。

事故が実際に起きなかったことは不幸中の幸いだが、それ以上に、鉄道員たちの「事故を絶対に起こしてはならない」という高い危機意識は、利用者の不安感解消に繋がるだろう。とはいえ、今後も同様の事故が発生する可能性は十分にあり、予断を許さない状況が続いている。