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朝鮮半島では昔から、土地を持たない貧しい農民たちが山に火を放ち、焼け跡に畑を作る「焼畑農業」が行われてきた。

彼らは「火田民」と呼ばれ、一時期は農民全体の1割を超える存在だった。韓国では朝鮮戦争中、北朝鮮軍の残党掃討の一環として、山奥に暮らす火田民が平地へ強制移住させられた。1965年には7万戸以上存在していたが、1979年までにすべての世帯が移住させられた。

現在では、気候変動の影響で大規模な山火事が頻発しており、焼畑はもちろん、山で火を扱うこと自体が厳しく禁じられている。

北朝鮮でも1950年前後、農業の集団化の一環として火田民の移住が進められた。一度は姿を消したものの、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の時期になると、食糧を求めた人々が再び山に入り、焼畑を始めるようになった。

最近では、中国との国境に近い平安北道の山間部で、住民たちが再び火を使って畑の整備を行っており、山火事のリスクが高まっているとデイリーNKの内部情報筋は伝えている。

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たとえば、朔州(サクチュ)郡では、農民たちが枯れ草や落ち葉を集めて燃やし、焼け跡を畑にする開墾作業を行っている。しかし、こうした焼畑の方法は山火事を引き起こす危険があるにもかかわらず、「火事にさえならなければいいだろう」と、住民たちは無責任な態度を見せているという。

今月18日には、朔州郡の清水(チョンス)労働者区で、耕作地の開墾中に火の粉が飛び、山火事になりかける騒動があった。幸いにも、近くで作業していた住民たちが急いで協力し、消火に成功したため、大きな被害には至らなかった。

しかし、現場に駆けつけた森林保護員は、「畑に火をつけるような行為は労働鍛錬隊に送られて当然だ」として、強く叱責。「二度と危険な行為をするな」と厳しく警告した。

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ところが、火をつけた当人は「みんなやっているのに、自分だけ責められるのは納得いかない」と不満を漏らした。火災を防ごうと駆けつけた住民たちも「実際に山火事が起きたわけでもないのに、懲罰だなんてやりすぎだ」と彼を擁護したという。

こうした焼畑の文化は長年の慣習として根付いており、同様の事例は後を絶たない。北朝鮮当局も毎年、山火事防止の通知や処罰制度を整備してはいるが、住民の警戒心を高めるには至っていないのが現状だ。

金正恩総書記は緑化政策の一環として、山から薪を採ることさえ禁じており、焼畑など本来は論外のはずである。

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(参考記事:「抜いて適当に植えるだけ」誰も守らない金正恩の植林命令

しかし実際には、たとえ山火事になりかけたとしても、森林保護員にたばこ数箱程度のワイロを渡せば見逃してもらえるため、住民の危機意識はますます低下している。

情報筋は「問題が起きても、たばこを少し渡せば済むという感覚が定着している」と語る。

(参考記事:「山火事防止」が利権に化ける北朝鮮の森林保護策

さらに、山には木や草がほとんど生えておらず、「仮に火が出ても、大きく燃え広がることはない」と住民たちは楽観的に考えているという。清水労働者区でも、多くの山がすでに個人によって開墾され、森林はほとんど残っていない。そのため、山火事の危険性を深刻に捉えていない住民が多いという。

情報筋は「政治的な発言や行動には非常に敏感なのに、山火事の問題には無関心な人が多いのが実情だ」と語る。そして「山火事に対する警戒心は非常に低く、取り締まりも形式的にしか行われていないため、今後も火災リスクは高まっていくだろう」と懸念を示している。

この問題の根底には、農場や工場で働いても十分な食料が得られないという現実がある。焼畑でなくとも、山に入り、自ら土地を開墾して作物を育てなければ、生きていけない人々がいるのだ。