北朝鮮は、ロシアに多数の労働者を派遣していると言われている。その全容は不明だが、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は今年2月、ロシア政府の統計を引用し、昨年ロシアに入国した北朝鮮人は1万3221人に達し、前年比で12倍に急増したと報じた。その多くが労働者と見られている。
労働者は、北朝鮮政府に多額の外貨の上納を求められているが、その額が4月から2倍に引き上げられた。
ロシアのデイリーNK情報筋は、サハリンで働く北朝鮮出身の労働者の話として、3月までの国家計画分(外貨の上納金)の額は1カ月6万2000ルーブル(約11万3000円)だったが、今月からはその2倍の額を納めよとの指示が下されたと伝えた。
これはロシアに限った話ではない。
(参考記事:【写真】美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面中国のデイリーNK情報筋は、大連の水産加工場に派遣された労働者に対して今月10日、3200元(約7万円)だった上納金を2倍にするという指示が下されたと伝えた。
(参考記事:中国のイチゴ農園に初進出した北朝鮮の女性労働者)その理由について双方の情報筋が挙げたのは、今年は「第8期党大会の最後の年」という理由だ。2021年2月の朝鮮労働党第8回大会では、第8期中央委員会のメンバーが選出されたが、今年はその任期の最後の年だ。
北朝鮮当局は、ロシアと中国に派遣された労働者を管理する企業に対して、「第8期党大会の最後の年を勝者の大祝典の場として輝かせるための外貨稼ぎ愛国運動」だとして、国家計画分の引き上げを指示した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「忠誠の資金」とも呼ばれる国家計画分の引き上げに伴い、労働者たちは、さらなる長時間労働に追い込まれている。
「北朝鮮の建設労働者は、稼いだカネのほとんどを国に取られるので、自分の取り分を貯めるのは容易でない。『党大会最後の年』と言って忠誠の資金の目標値を2倍に増やしたことで、労働者たちは『死ぬほど働いても一銭も手に入らない』と嘆いている」(ロシアの情報筋)
「ある女性労働者は『2、3年(働いて)結婚資金を貯めてから祖国(北朝鮮)に帰るつもりだったが、忠誠の資金(の倍増)のせいで、いつまで経ってもお嫁に行けない』と嘆いている」(中国の情報筋)
(参考記事:狙われた美人ウェイトレス…北朝鮮「水抜き」処刑)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
だが労働者は、より一層ひどくなった搾取の不当性を訴えるすべがない。中国の人たちは、そんな彼女らを気の毒そうに見ている。
「(北)朝鮮の若い女性労働者たちは賃金もまともにもらえず、管理者の目線を気にしながら耐えるしかない。そんな彼女らの惨めで悲惨な現実を知るここ(中国)の人々は、とても気の毒に思っている」(中国の情報筋)