国際女性デー(今月8日)に際し、米国のニューヨーク市で12日、北朝鮮国内における性暴力に関する討論会が、韓国の国連代表部主催で開かれた。
話し合われたのは、北朝鮮の性暴力に責任のある個人と団体に国際社会が制裁を科すことで犯罪を看過しないことを明確にし、将来的な責任追及につなげるべきとする内容だ。
この種の取り組みは前例がある。欧州連合(EU)は昨年7月、北朝鮮の李昌大(リ・チャンデ)国家保衛相と咸鏡北道(ハムギョンブクト)の穏城(オンソン)郡拘留場を制裁リストに加えた。
EUはその理由について、李保衛相は「北朝鮮国内の拘禁施設および収容所に収監されている女性や少女に対する、国家保衛省の官吏たちによる数多くの性暴力に責任がある」と説明。また、穏城郡拘留場では「拷問やその他の残忍で非人間的または屈辱的な扱いが慣行的に行われている」とし、特に女性に対する強姦や奴隷化、強制堕胎が横行していると指摘した。
(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為)
もちろん、北朝鮮における性暴力すべてが、保衛省との関連で引き起こされているわけではない。しかし、この問題で保衛省を強くけん制することができれば、多少なりとも状況が改善する可能性はある。
典型的な事例を挙げよう。
2018年9月末、中国との国境に面した北朝鮮・咸鏡北道(ハムギョンブクト)に住む30代の女性、キムさんは、脱北を試みて失敗し、現地の郡保衛部(秘密警察)に逮捕されてしまった。
その後、拘留場内でケガを負ったキムさんを、保衛部は病院に搬送。知らせを受けた家族は病院へ見舞いに行き、弁当を差し入れた。数日後、病院から弁当箱を返された家族は、その中に隠されていた紙片を見て驚愕し、怒りに震えた。
そこには、拘留場内で2人の戒護員(留置担当者)から性的暴行を受け、ひどいケガをさせられた経緯が書かれていたのだ。しかも戒護員らの手口は、キムさんに手錠をはめ、口にはボロ布を詰め込んで乱暴するという、まさに鬼畜と言うべきものだった。
(参考記事:女性少尉を性上納でボロボロに…金正恩「赤い貴族」のやりたい放題)北朝鮮の拘禁施設内においては、このような性的虐待が長らく横行してきた。しかしこのような行為は、北朝鮮においても明確に違法であり、重罰の対象となる犯罪である。
金正恩政権は、人権状況を改善せよとする国際社会からの要請をはねつけながらも、それなりに体面を気にしているふしがある。EUが取ったような手法で継続的に圧力を加えれば、何らかの変化が起きないとも限らないのだ。