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日本で3月14日はバレンタインデーにチョコレートなどをもらった男性が女性にお返しをする「ホワイトデー」だが、北朝鮮にそういった習慣はない。そのかわり、3月8日の「国際婦女節(国際女性デー)」には、男尊女卑と亭主関白の傾向の強い夫たちが、妻のために料理をしたり、花を贈ったりする。

また、そうした趣旨の行事も開かれる。今年はどのようなイベントがあったかまだ伝わっていないが、昨年には海軍の潜水艦部隊指揮官の妻たちに、化粧品が贈られた。送り主はほかでもない、軍の最高司令官でもある金正恩総書記だ。

金正恩氏は近年、海軍にご執心だ。乗り物好きで知られ、以前は空軍基地に足しげく通って戦闘機を見物し、喜色満面な様子を国営メディアで公開していた。

だが、軍用機は老朽化する一方で、新型機の導入も進まず、さすがに飽きたのかもしれない。今では弾道ミサイル潜水艦や原子力潜水艦などの建造に取り組む海軍への入れ込み方がより顕著だ。

(参考記事:金正恩氏の「高級ベンツ」を追い越した北朝鮮軍人の悲惨な末路

金正恩氏が潜水艦部隊の指揮官の妻たちに贈り物をしたのは、彼女の夫らにかける期待がそれだけ大きいからだろう。北朝鮮ではたいへん名誉なことであり、夫婦ともに喜んだかもしれない。

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しかし空軍と同様、既存の潜水艦は老朽化が深刻だ。戦闘では、敵に発見されないため静寂性が最も重要だが、北朝鮮軍の潜水艦は「海中の耕運機」と呼ばれるほど音がうるさい。米韓軍と衝突すれば、撃沈されるのはまず間違いない。それ以前に、平時の訓練での潜水も命がけだろう。

新型の弾道ミサイル潜水艦にしてみても、技術力が不足しているのに無理やりミサイル発射塔を詰め込んだせいで、「1発撃ったら沈むのではないか」と見る専門家もいる。

もっとも、金正恩氏としてはそれでもまったく構わないのだろう。弾道ミサイルに核弾頭を搭載できれば、「使い捨て潜水艦」であっても米韓にそれなりの脅威を与えることができるからだ。将兵の生命など眼中にないことは、ロシア派兵の例を見ても明らかだ。

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軍人やその家族も、そうした現実を骨身に沁みて認識しているかもしれない。

(参考記事:「泣き叫ぶ妻子に村中が…」北朝鮮で最も”残酷な夜”

だからといって、もはや逃げ隠れすることはできず、命令に異を唱えることもできない。そんなことを試みればどうなるか、彼らがいちばんよく知っている。

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それも軍人であれば当然のことなのかもしれないが、金正恩氏が直々に下賜した「贈り物」は、潜水艦指揮官たちのより強い忠誠を要求するものでもあり、彼らとその家族の暗鬱とした運命をより強く決定づけたと言えるのだ。