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北朝鮮の独裁体制は、恐怖政治で国民をコントロールしてきた。その象徴的な手段が公開処刑である。

1998年に脱北した北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)出身のパク・スジンさん(仮名)は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)のインタビューに、こう証言している。

「『そんなことくらいで処刑されるの?』皆がそう思っていたはずです。でも、そのことを口に出せませんでした。あまりの恐怖に震えていました。今では北朝鮮国民も変わって、ごく親しい間柄ならそういう話をするでしょう。でも、当時はただただ恐ろしく、今とは空気が異なりました」

パクさんの言うとおり、最近の北朝鮮社会の空気は変わった。昨年5月に木造船に乗って脱北した30代のキム・イルヒョクさんは、恐怖政治に対する北朝鮮国民の考え方の変化が起きつつあると述べている。

「(死刑にされた若者の母親は)『うちの息子は単に南朝鮮(韓国)映画を見ただけなのに、あんなふうに殺されなければならないのか。間違っている』と訴えていました」

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2000年代初頭まで、北朝鮮国民はむしろ処刑された方を批判することも多かったというが、最近は雰囲気が変わったという。

「私が子どものころは、『悪い奴らが強盗に入って、南朝鮮のラジオを聞いたらしいよ。全部捕まえて死刑にしなきゃ』という人が多かったんですが、今では雰囲気が変わりました。だからといって(当局に)抗議することはめったにありませんが、『かわいそうに、まだ23歳なのに…』『まだまだこれからというときに…』などと、韓国の歌70曲、映画3本を見て友だちにシェアしたという理由で銃殺された若者に対してはそんな声が聞かれました」

銃殺を見た人々は、あまりに不当だとして、彼に同情したとのことだ。

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「雰囲気は以前と異なります。話にもならないような不当な罪名であんなふうに虐殺されたのを見た人々は、納得の行くような理由を聞かされていません。人権が全く尊重されていない、顔を布で覆われて、発言権も与えられないまま銃殺されます。本当に罪を犯したのか冤罪なのかわからないじゃないですか。通りかかっただけの人を気に入らないといって罪をでっち上げたのかもしれないじゃないですか。あんなのはまともなことではありません」

北朝鮮のミレニアル世代、Z世代(10代から30代)、いわゆるMZ世代は、公開処刑が、金正恩政権の恐怖政治の手段であることを見抜いている。

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「北朝鮮のMZ世代は知っています。何が間違っているかすべて知っています。知らない人はいません。(北朝鮮当局の立場からすると)体制を守るためには無慈悲に殺すしかないんです。人々が恐怖に震えているのは確かなので。この方法しかないでしょう。いっそうひどくなるはずです。(統制を)弱めれば体制が崩壊してしまうので。北朝鮮のMZ世代なら皆、知っていることです」