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国、党、そして首領(金正恩総書記)のために命を捧げ革命云々。北朝鮮で多用されるこのようなレトリックだが、若者の心には全くといっていいほど「刺さらない」のだ。

先月20日から23日まで平壌で開催された朝鮮労働党第2回宣伝部門イルクン(幹部)講習会で、党中央委員会書記の李日煥(リ・イルファン)氏は、次のような指摘を行った。

報告では、党組織と党宣伝部門の活動家が激変する現実に応じることができず、宣伝・鼓舞活動においてはっきりした改善がないことについて厳正に分析された。

若者を対象にした愛国心、党や金正恩氏に対する忠誠心を引き出す宣伝扇動事業において、思ったような成果が得られていないのだ。

(参考記事:北朝鮮で第2回宣伝部門活動家講習会が開催

北朝鮮は、「青年教養保障法」を制定し、若者は「社会主義強国建設のための突撃隊」だとして、思想教育を行っている。ところが、当の若者の考えは全くの逆で、「なぜ党と首領、国のために命を捧げなければいけないのか」と反発する。小中高と大学では、「犠牲と忠誠」が説かれるが、当の生徒、学生たちはそんな言葉を完全スルーする。

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「犠牲」のひとつの形態として「嘆願事業」が挙げられる。若者が、きつい、汚い、危険の「3K労働」の現場に志願するというキャンペーンだが、志願とは名ばかりで、実際は強制だ。平壌在住の20代、Aさんは、次のように語った。

「『自分の幸せを投げ売って、国のためにきつい職場を選択する青年英雄』には表向き拍手を送るが、裏では『頭がおかしくなってあんな選択をしたんだ』、『人付き合いができないから、国のプロパガンダを信じてしまう」と言った反応を見せる」

最近の言葉を使って言い換えるなら「あいつはあたおかでコミュ障だ」といった具合だろうが、それにしてもずいぶんな言われようだ。Aさんは「成分(身分)が悪くて社会的に出世が望めない人が、その足がかりを作るために嘆願するケースがほとんど」と述べた。このあたりには、成分のよい人しか住めない平壌の特殊性と差別意識が垣間見える。

(参考記事:もはや「就職詐欺」というべき北朝鮮の嘆願事業

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当局も、このような若者の考え方を認識しているようだ。

社会主義愛国青年同盟の学習資料には、「社会主義の信念で武装し党と祖国への忠誠心で煮えたぎるべき若者が、個人的な金稼ぎや経済的安定にしか関心を持たないのは、打開すべき問題」と記されている。だが、それに対する効果的なソリューションは持ち合わせていない模様だ。

(参考記事:「恥知らずな要求するな」金正恩の”思想教育”に国民反発

デイリーNKは、複数の北朝鮮の若者に、「今後5年から10年で成し遂げたいこと」について質問した。すると、「労働党への入党」、「博士院(大学院)進学、博士学位取得」、「貿易に携わって海外に行きたい」という答えが返ってきた。

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ところが、「人生の願い」と質問を変えると、「社会的成功」、「経済的安定」と答えも変わった。

かつては労働党に入って幹部になることが成功と捉えられていたが、今では「腰掛け」程度の扱い、いやむしろ邪魔扱いされ、より重要なことは経済的に安定して社会的に認められるという、個人の幸せの方が重要視される。大学院進学は、金正恩政権が教育を重要視していることから、成功への近道と思われているようだ。

これについて、韓国政府系のシンクタンクの統一研究院のチョン・ウンミ研究委員は、「北朝鮮当局は、青年教養保障法を制定して若者の行動を押さえつける一方で、モバイルゲームの開発、芸術公演への招待などアメとムチを使い分け、文化的欲求を満たそうとしているが、若者の考え方や思想を変化させるのは限界がある」と指摘した。

「韓ドラのような暮らしがしたい」という若者と、「忠誠を尽くす品行方正な若者になれ」という当局の考え方の乖離を埋めるのは極めて困難と言わざるを得ない。