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北朝鮮は2021年9月の最高人民会議で「青年教養保障法」を成立させた。若者の行動や思想を縛り付ける北朝鮮「3大悪法」の一つだが、法律を制定してまで押さえつけなければ、若者をコントロールできなくなった状況を示している。北朝鮮の「MZ世代」(1980年以降に生まれた世代)の考え方は、旧世代といかに変わったのか。

青年教養保障法第41条は、若者がしてはならない行為を羅列しているが、16項目の中に「家庭の事情や病気を理由に兵役を拒否したり、兵役から逃れる目的で早婚、身体検査、生活評定を不当に受けたり、自分の体に傷をつけたり、逃亡したりするなどの兵役動員の忌避、誠実に参加しない行為」というものが含まれている。

法律を制定して違法行為として取り締まらなければならないほど、北朝鮮の若者の兵役逃れが深刻化しつつある。このような現象は、招募(新兵の入隊)が行われる毎年春に見られるが、今年は特に顕著だったという。沙里院(サリウォン)のような地方都市はもちろん、首都・平壌ですら話題になったほどだ。

国や社会より自分の暮らしが大切

平壌のデイリーNK内部情報筋は、「新世代の若者の間で祖国防衛の義務に対する認識が大きく変化している、多くの若者が経済的困難を脱却するために軍入隊を避けており、特に今年春の招募期間にその傾向が顕著に現れた」と話した。

黄海北道(ファンヘブクト)の情報筋も「沙里院では経済的に余裕のある親たちが、医者にワイロを渡してカルテを捏造するなどして、わが子の名前を入隊対象者リストから消させたケースもあった」と伝えた。

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北朝鮮当局が兵役の重要性を強調する思想教育を引き続き行っているが、経済的な状況、価値観の変化により、兵役に対する否定的な認識が広がっているというのが情報筋の話だ。

「最近の青年たちは、国のために青春を捧げるよりも、お金を稼いで豊かに暮らしたいという欲求が強い。個人の生活を優先する新世代の価値観が影響している」(黄海北道の情報筋)

以前ならほとんどの若者が、兵役を務め上げて朝鮮労働党員になることを目指した。兵役は言わば、社会人になるための足場固めのようなものだったのだが、近年は入党の敷居が高くなり、出世の可能性も不確かなため、賢明なMZ世代は兵役の必要性を感じないという。

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「運良く入党できても、退役軍人の党員に対する社会的優遇や恩恵は以前ほど大きくなく、むしろ党員であることを理由に、祖国のために困難な仕事に身を投じることを強要される。そのため、自分自身をより大切に考え、いかにして金儲けをするかを新世代にとって、兵役は良いことはないと考えている」(平壌の情報筋)

党員になるには、推薦を受けて2年間の候補党員(見習い党員)として活動してようやく認められる。

その後は、職場に出勤して労働新聞を読む会に出席し、最高指導者の肖像画を磨き、週数回の政治講演会、土曜日に丸一日行われる政治学習などに参加し、毎日の生活総和(総括)を行なう、いわゆる「党生活」を強いられる。

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党員には様々な無理難題が押し付けられ、ミスを犯したりノルマを達成できなければ処罰される。ワイロも要求される。幹部になればそれなりの待遇を期待できるが、過ちに対する処罰の厳しさも段違いだ。また、経済活動に関わるのが禁止されているため、いつまでも貧困から抜け出せない。

若者が思い描く「韓国のような暮らし」の実現にまったくつながらないのだ。

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体制維持に影響

北朝鮮当局が若者の兵役逃れの取り締まりを強調しているのは、これが党の軍事力強化方針と体制維持に直接影響する深刻な問題だからだ。

「軍の隊列補充局では、今年の招募計画人員の6割をなんとか満たした。少子化の進行と相まって、若者の兵役逃れは、祖国防衛のための人民軍の戦闘準備と直結する重大な問題だと隊列補充局は考えている」(黄海北道の情報筋)

それで、北朝鮮当局は兵役の重要性と意味を説きつつ、若者の思想の乱れを防ごうと躍起だ。青年教養保障法第12条に、「祖国保衛は社会主義偉業遂行において一刻も疎かにできない重大な国事であり、血に燃える青年たちの最も神聖な義務である」と明記している。

それでも若者の考えを変えるのは困難だ。

「若者の認識を変えるためには、国レベルで経済的困難を解決する方策を出し、軍の生活条件を改善するなどの根本的な努力が必要だ。党と国家への忠誠心、忠誠心だけを強調する思想教養に力を入れるよりも、彼らの欲求を正確に把握し、それに応じた対応策を立てなければならない」(平壌の情報筋)