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ニューヨークに本部を置く国際人権団体「ヒューマン·ライツ·ウォッチ」は7日、新型コロナウイルスの世界的流行に際し、より悪化した北朝鮮の人権状況を調査分析した報告書「銃弾より強い恐怖;北朝鮮の閉鎖(A Sense of Terror Stronger than a Bullet:The Closing of North Korea)2018-2023」を公開した。

この期間、北朝鮮は防疫対策を口実に、人々に対する統制を強化した。自由市場を中心に経済の「草の根資本主義化」が進み、人々が自律性を強める様子に、金正恩総書記は危機感を覚えたのかもしれない。

北朝鮮の流通の中心地、平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)にある市場は、そうした警戒心の最大の対象だったはずだ。

2021年3月1日、内閣商業局の取り締り班が平城の市場を急襲した。ターゲットは、外国製品のコピー製品の製造、販売をしていた業者だった。

平城は、コピー製品の製造技術が発達した地域の一つとして知られていた。国家科学院平城分院など研究機関の技術者らが業者に雇われ、指導してきたためと言われている。その「成果」として、平城の市場には鞄、靴、コートなど安価で良質な革製品が多く出回った。本物と区別できないほどの精巧さで需要が高く、各地に出荷されていた。

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取り締まりの理由は、「1月の朝鮮労働党第8回大会で示された方針に従い、個人生産品は国家品質監督委員会の承認を受けたものに限って市場での販売を認められることになった」というものだった。しかし実際には、売れない商品ばかり作る国営工場の経営にテコ入れし、さらには個人商人の在庫を没収・転売して、カネに変えようとの下心が見え見えだった。

これに対し、地元で「レザーの女王」と呼ばれてきた女性商人のオさんらが激しく抵抗した。埒が明かないと判断した取り締まり班は、中央党(朝鮮労働党中央委員会)に報告。翌日には社会安全省(警察庁)のチームが出動し、なおも抵抗するオさんの言動が「反党的である」として逮捕した。

コピー製品の生産に複数の科学者や研究者が関わっていることを把握した社会安全省は、技術を伝授した者の名前を吐けと拷問にかけたが、オさんは口をつぐんだままだという。その後、オさんが釈放されたという情報は、どこからも聞こえてこないままだ。

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かつての北朝鮮では、庶民が権力に抵抗するなど考えにくいことだった。社会主義配給システムが機能していた時代、体制は国民の生殺与奪を握っていた。それは裏を返せば、従順にしていれば「生きてはいける」ことを意味してもいた。

しかし、1990年代の「苦難の行軍」と呼ばれた大飢饉を境に状況は変わった。国家は配給システムを維持できなくなり、人々は否応なく自立を強いられた。商売など経験したこともなかったが、選択の余地はない。市場で恐る恐る商いを始めた。国家も、そうした現実を追認するしかなかった。

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そのようにして、北朝鮮の人々は私有財産を蓄えるようになった。大量の餓死者を出した「苦難の行軍」の経験は、いざというときに頼れるのは自分だけであることを教えていた。国家にみすみす財産を奪われることは、死に近づくことを意味していた。

しかし、それで引き下がる金正恩氏ではない。北朝鮮当局は、大衆の「抵抗する心」が完全に折れるまで、市場に対する統制を強めるだろう。ただ北朝鮮の現状を見ると、国家主導の経済が再び配給システムを稼働させ、国民の生殺与奪を完全に握るまでになるのは不可能に思える。ということは、時間は長くかかるかもしれないが、「金正恩 VS 市場」の戦いは、後者の勝利で終わる可能性が高いのではないだろうか。