「もう核を作らなくても」発言した北朝鮮軍高官を公開処刑

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北朝鮮の金正恩総書記は昨年末の朝鮮労働党中央委員会総会と今月初めの最高人民会議(国会)で、「敢えて戦争を避けるつもりはない」などの過激な発言を繰り返し、情勢の緊張を煽っている。

金正恩氏が国力に勝る米韓を向こうに回し、こうまで強気に出られるのは「核兵器」を持ったからだ。

しかし、北朝鮮内部の声に耳を傾けてきた韓国デイリーNKなどの取材によれば、北朝鮮国民の多くは核兵器開発より民生の向上を願っている。そして、その中には軍の高官も含まれている。

朝鮮人民軍のヒョン・ジュソン中将もそのひとりだった。彼は、史上初の米朝首脳会談実現への機運が高まっていた2018年4月10日、戦時物資の総合検閲の際に西海衛星発射場(ロケット発射場)を視察しながら、「もう苦労してロケットや核兵器を作らなくても済む」と発言した。米朝関係が改善すれば、核兵器開発に投じられていた莫大な国費を、ほかに振り向けることができる、との趣旨だったと思われる。

ところがこの発言が、職権乱用と党の先軍路線に反対する利敵行為とみなされることになった。利敵行為は反逆と同じ意味である。同年5月初めの裁判で死刑判決を受け、江健(カンゴン)軍官学校の射撃場で、人民武力省庁舎警務部(憲兵隊)の第2大隊第1中隊の兵士9人から拳銃弾計90発を打ち込まれ、処刑された。

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ヒョン・ジュソン中将に対する公開処刑は、米国務省が2020年3月に公開した、世界の約200カ国・地域を対象にした2019年版の人権報告書でも言及された。

米朝対話が決裂したのは、2019年2月のベトナムでの首脳会談が失敗に終わってからだ。ヒョン・ジュソン中将の処刑は対話が進むさ中での出来事であり、米国政府にも衝撃を与えたと思われる。

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この事件が示唆するのは、北朝鮮の核兵器は国家のものではなく、金正恩氏個人の所有物であるということだ。

いま、我々が認識すべきは「北朝鮮の核の脅威」ではなく、核武装した「金正恩の脅威」なのである。