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先月26日に行われた北朝鮮の地方人民会議(地方議会)大議員選挙について、国営の朝鮮中央通信は次のように報じている。

投票した選挙人のうち、道(直轄市)人民会議代議員候補に対して賛成した選挙人は99.91%、反対した選挙人は0.09%、市(区域)・郡人民会議代議員候補に対して賛成した選挙人は99.87%、反対した選挙人は0.13%で、朝鮮民主主義人民共和国各級人民会議代議員選挙法に従って、2万7858人の労働者、農民、知識人と活動家が道(直轄市)・市(区域)・郡人民会議の代議員に当選した。

前回選挙では100%賛成だったのに比べると、わずか0.09%ながら反対票が出た。それでも、「民主的な複数候補制選挙」であったと国際社会にアピールするには、あまりにもお粗末な数字だ。

今回の選挙からは、予備選挙を経て選ばれた2人の候補が立候補する複数候補制が導入されたが、実施されたのはごく一部にとどまったようで、選挙結果を報じる記事からは、現場がどのような状況だったかは読み取れない。

当の有権者からも、投票前から「何の意味もない」との声が上がっていたが、実際の現場はどうだったのか。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が詳細を報じている。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、選挙場(投票所)の掲示板には、各人民班の有権者の名前と、咸鏡北道代議員候補と市の代議員候補の名前が貼り出されていた。

まずは自分の名前にチェックをして、投票用紙を受け取る。前回までは、それを投票箱に入れるだけで投票完了だったが、今回は少し違った。選挙委員が有権者に「賛成なら緑の投票箱に、反対なら赤の投票箱に投票する」と投票方法を説明した。

選挙委員はさらに有権者にこんなお願いをした。

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「緑の箱が賛成の投票箱だ。間違わずに必ず2枚の投票用紙(道、市)ともに緑の投票箱に入れてほしい」

新しい投票方式に有権者は少なからず動揺した。選挙委員は、慌てた有権者が赤の箱を見て朝鮮労働党の旗を連想し、そちらに入れてしまうことを懸念して、熱心に「緑の箱に入れて」と説明したようだと、情報筋は述べた。

両江道(リャンガンド)の情報筋も、投票所にいた選挙委員が、投票用紙を絶対に赤の箱に入れてはいけない、必ず緑の箱に入れよと強いたと述べた。2人の選挙委員は投票所の入口と出口で見張っており、とても赤の箱に入れられる雰囲気ではなかったという。

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有権者に本当に反対票を投じる意思があったのか、間違えて反対に投票してしまったのかとは関係なく、反対票が出ることそのものが政治的事件として取り扱われ、当の有権者はもちろんのこと、選挙委員までも処罰の対象にされてしまうからだ。

(参考記事:男たちは真夜中に一家を襲った…北朝鮮の「収容所送り」はこうして行われる

結局、やり方が少し変わっただけで、賛成票を強いる茶番であることには、何ら変化がなかったということだ。

一方で、投票に参加できなかった人々もいた。朝鮮中央通信は「外国に滞在中、または遠海で作業中の選挙人が、選挙に参加できなかった」と報じているが、それだけではない。「山ごもり」している人々もいたのである。

北朝鮮の地方には深刻な飢えに耐えかね、家を棄てて村を出て、山にテントを張って狩猟採集生活をしている人々がいる。江戸時代の「逃散」と同じようなものだ。

当局は、そんな人々に市街地での「臨時居住」を許可し、人民班が臨時居住者として登録作業に当たった。しかし、すべての人を登録させるのは困難で、結局投票できなかった人が多くいただろうと情報筋は見ている。

登録されていなければ、投票率とは関係がないので、どうでもいいという扱いなのだろう。

(参考記事:山ごもりする世捨て人を統制下に置こうとする北朝鮮の「ご配慮」