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国連総会で人権問題を担当する第3委員会は15日、北朝鮮による人権侵害を非難する欧州連合(EU)提出の決議案を議場の総意(コンセンサス方式)により投票なしで採択した。

2005年から19年連続で採択された北朝鮮人権決議案は来月、国連総会本会議に上程される。

決議案の内容は大部分が昨年と同じだが、今年は新たに「全ての加盟国が根本的な『強制送還禁止の原則』を尊重するよう強く促す」とのメッセージが加えられた。北朝鮮が新型コロナウイルス対策として取ってきた国境封鎖が解除され、中国で拘束されていた脱北者の強制送還が再開された状況に懸念を示したものと言える。

中国は10月9日、杭州アジア大会が終わると同時に脱北者数百人を北朝鮮に強制送還したが、その約1カ月前に、国連に対して「北朝鮮に送還された脱北民が拷問を受けるという証拠はない」と主張していたことが明らかになっている。

たしかに、北朝鮮は世界で最も閉鎖的な国家と言えるが、その内部で起きる人権侵害については、国際NGOなどが様々な方法で監視を続けている。

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米国の人権団体「北朝鮮人権委員会」(HRNK)のグレッグ・スカラチュー事務総長は、中朝国境地域の咸鏡北道(ハムギョンブクト)にある全巨里(チョンゴリ)教化所の過去数十年に渡る衛星写真を分析。その結果、女性収容施設が拡張されていることが判明した。

(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

北朝鮮の拘禁施設は、強制労働、拷問、劣悪な環境で、国際社会の激しい批判を浴びている。とりわけ、女性虐待が日常化している実態は、元収容者や関係者の告発により明らかになっている。

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教化所(刑務所)の受刑者は、金正恩体制が思い通りにできる都合の良い存在であり、意のままに酷使している。

国営の朝鮮中央通信は2020年7月、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の金野(クミャ)郡に、数千ヘクタールの農地に水を供給する灌漑施設が完成したと報じた。同通信は「道内の活動家と道民の献身的努力によって」建設されたとしたが、現地のデイリーNK内部情報筋によれば、工事に動員されたのは28人の女性を含む受刑者たちだった。

現場では、人権侵害が横行した。上層部から工事の出来の悪さを指摘された作業隊長は、ただでさえ少ない受刑者の食事を、トウモロコシ飯一杯から一さじに減らしたうえで激しい体罰を加えた。受刑者は次々に倒れたが、誰も抗議もできず、「この悪夢はいつさめるのか」と囁き合うしかなかったという。

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北朝鮮はただでさえ交通インフラが未整備で、都市部から地方へ行くのも一苦労だが、刑務所はだいたい「陸の孤島」のような場所にある。内部の食糧事情と衛生環境は劣悪で、家族の差し入れがなければ、受刑者のほとんどは生き延びることさえできない。

そんな状況でトウモロコシ飯を一さじに減らすということは、死に追いやるのとまったく同義だ。

また、女性受刑者の中でも特にひどい扱いを受けるのが中国で摘発され、強制送還された脱北者たちだ。そういう意味で、国連安保理で北朝鮮の人権状況が協議されるというのは、中国にとって他人事ではないのだ。