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過去30年間にわたって、北朝鮮経済をリードしてきた市場。その勢いを抑え込み、経済の主導権の取り戻そうとする北朝鮮政府の動きがますます強まりつつある。現状を米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えた。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、今月3日に恵山(ヘサン)市内中心部の市場、商店、大通りなど人が多く集まるところに、「国家の統制圏の外で物資の取り引きをしたり、外貨を流通させる行為を徹底的に禁止することについて」と題した社会安全省(警察庁)の布告文が貼り出された。

その大まかな内容は、個人が大量の商品を手に入れて、別の個人に売り渡すことを禁止するというもの。つまり、卸売の禁止だ。商品はすべて国営商店に出荷し、個人に認めるのは、制限された少量の商品を販売することだけだ。

また、別の情報筋によると、商品の価格の決定も当局が行う方針とのことだ。

「協同農場の共同経理と協同農場の個人副業経理で生産された農産物と畜産物の一部を農民が一定の場所を通じて住民に直接販売する商業の一つの形」
(1958年8月の内閣決定140号)

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これは、北朝鮮が定めた市場の「あるべき形」であり、穀物や生活必需品、工場で生産された加工食品、衣類、電化製品などは国営の商店で配給するという、1980年代以前の北朝鮮の流通の形だ。

今回、社会安全省が出した布告は、その復活を目論んだものだろう。個人が卸売業を営んでいる現状では、製造された商品はそちらにばかり卸され、儲けの少ない国営商店への供給は減らされて開店休業状態となる。そのような状態を解消すれば、卸売で利益を得るトンジュ(ニューリッチ)の力を抑え込むことができると考えているのだ。

一方、情報筋はこのようにも見ている。

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「当局は戦々恐々とした民心と住民の動揺に強力な布告での対応に乗り出した」

北朝鮮当局は2020年1月、新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために国境を封鎖し、人と物の出入りを一切禁じる鎖国状態に入った。それに伴い、国内は深刻な食糧難に陥り、人々の不満は爆発寸前だ。このような場合、世論をなだめるために積極的な支援策を取るのではなく、むしろ締め付けを厳しくするのが当局の常套手段だ。そのひとつとして、市場に対する締め付けをさらに強化しようというのであろう。

この布告に基づき、さっそく取り締まりが行われている。

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布告が貼り出された翌々日の5日、平安北道(ピョンアンブクト)から両江道に向けて出荷されたコメを受け取ろうとしていた商人3人が、非常防疫指揮部に現場で摘発された。3人はいずれも50代女性で、地元では大物のコメ卸売商として知られていた。

また、両江道内の白岩(ペガム)で、闇夜に食糧を20トンの大型トラックに積み込む作業をしていた2人が現場を急襲され、1人は逃げおおせたものの、1人は逮捕され、恵山市安全部(警察署)に勾留されている。

このニュースはあっという間に地元に広がった。

人々からは当然のことながら、強い不満の声が上がっている。
「コメが出回らず生活が苦しいから犯罪が起きる」
「食糧難のせいで引き起こされる様々な犯罪を布告で防げるのか」
「国が商品をくれるわけでもないのに、住民が生計を立てるためにやっていることに口出しするのは的外れ」

情報筋はこう締めくくっている。

「食糧問題を解決できない当局は、布告を出すのではなく、住民が自分の力で生きていけるように自由な商業活動を保障すべきだ」

商業活動に対する取り締まりの強化は、現金収入をそれに頼っている北朝鮮国民にとって、「餓死せよ」というのも同然だ。また、稲作がほとんどできず、貿易、鉱業以外の産業が発達していない両江道で、卸売業を取り締まると、食糧と物資の不足はさらに深刻にならざるを得ない。

(参考記事:「毎日が戦いだ」北朝鮮で庶民と警察の衝突が頻発…暴動に発展も