人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮北部の慈江道(チャガンド)当局は、道内の市と郡に総合薬局の分店をオープンさせることを指示した。しかし、地元民の反応は今ひとつだ。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

朝鮮労働党慈江道委員会(道党)は今月10日の道党総会で、2023年度下半期の保健部門の改善のために、来年末までに道内全ての市と郡に総合薬局の分店を開設することを決定した。

今月から建物の設計を始め、年内には建物の基礎工事を完了させ、来年に入ってからは内装工事を行い、来年末までにはオープンさせるというのが計画だ。

この総合薬局とは、国内の製薬工場で生産された西洋薬、漢方薬などを販売する大型薬局で、慈江道では昨年オープンした。国営の朝鮮中央通信は昨年8月31日の記事で次のように報じている。

江界市に総合的な薬局を新たに建設

【平壌8月31日発朝鮮中央通信】慈江道で、江界市に総合的な薬局を新たに建設した。
薬局には、医薬品取り扱いの衛生安全性を徹底的に保障できる薬品販売区域と処方区域、待機区域、検査区域、製造区域、保管区域があり、医薬品の使用で必ず知っておくべき常識資料も展示されている。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

販売区域には、高麗薬コーナーと新薬コーナー、医療用消耗品コーナーが設けられ、処方区域には医師相談室と待機室が、検査区域には検査室と分析室が、製造区域と保管区域には高麗薬製造室と薬品倉庫などがある。---

しかし、道内各地から江界(カンゲ)まで行くのは大変だ。それ以外の地域の人々は、従来どおり、市場で医薬品を購入している。それを解消し、すべての地域で国内製の医薬品が購入できるようにするというものだ。

北朝鮮当局は最近、配給システムや保健医療制度などが機能していた1980年代以前の状態を復活させようとする動きを見せているが、総合薬局の展開もその一環だろう。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

(参考記事:本腰を入れて市場を潰しにかかる北朝鮮の「計画経済回帰策」

しかし、地元民からの反応は薄い。

「慈江道は、市場や個人(商人)に依存してきた薬品供給を根絶すると言っているが、地元民は(そこにたどり着くには)道のりが遠いとして現実感を感じられずにいる」(情報筋)

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

かつては病院に行けば診察と治療、薬の処方まですべて無料でできていたが、今では何をするに当たってもワイロが必要となり、医薬品はすべて市場で購入することが求められる。供給が足りておらず、中国から密輸されたものを使うことがほとんどだ。

ハコモノ好きの北朝鮮当局だけに、とりあえず立派な総合薬局の建物から建てようということのようだが、住民は国内で生産された薬がいつでも買えるようになることは期待していないようだ。

「病院があってもわが国(北朝鮮)の名前で作られている薬はひとつもないのに、薬局を建てたからと何の意味があるのか」(情報筋が伝えた市民の声)

ちなみに、同じように市場で買うことが当たり前になったコメなどの穀物を販売し、穀物流通の主導権を市場から国の手に取り戻す目的で解説された「糧穀販売所」も、うまくいっているとは言い難い。

買取価格が安いことから、農民が糧穀販売所にコメを売ろうとせず、充分な量が確保できない。そのため販売制限をもうけたが、それでは必要な量が買えず、結局は市場で買うしかない。また、ツケが効かない、コメの質に関係なく値段が同じなど、1980年代以前の悪弊を煮詰めたような代物と化してしまった。

(参考記事:金持ちと転売ヤー御用達に転落した「金正恩の米屋」

その薬屋バージョンである総合薬局。何らかの機会に利用したことがあるであろう地元民から期待の声が上がらないところを見ると、失敗に終わる可能性が高いと思われる。

結局は、建物を商人に貸し出して、医薬品の販売をさせて、その利益の一部を家賃として納めさせ、あたかも運営がうまくいっているように見せかける「なんちゃって国営総合薬局」になるのではないだろうか。

(参考記事:国家がどう頑張っても押し戻せない北朝鮮の「市場経済化」