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中国の春秋戦国時代、晋の介子推は、驪姫の乱で国を追われた主君の文公と共に長年にわたる放浪生活を送った。文公が食べ物を奪われ飢えに苦しむのを見て、介子推は、自分の太ももの肉を切り取って食べさせた。このエピソードから「割股奉君」(股を割きて腹を満たす、腿の肉を切って主君に奉公する)という故事成語ができたが、これは「忠誠心の大切さ」を子どもたちに教えるために「創作」された美談だろう。

そういうやり方は2023年の北朝鮮でも生きている。ある高校生たちの最高指導者への「忠誠素行」(忠誠心を示す行いの美談)がプロパガンダの格好のネタとなっているが、当の高校生たちには嘲笑されている。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

咸鏡北道のエリート高校、清津(チョンジン)第1高級中学校のあるクラスの生徒たちは、たらいと新しい雑巾を持って、市内中心部に建っている故金日成主席、故金正日総書記の銅像の大理石でできた階段や、その周辺をきれいに掃除した。彼らはしばしば銅像の掃除を行っているが、4月15日の太陽節(金日成氏の生誕記念日)と25日の朝鮮人民革命軍創建日には、特に念入りに掃除したという。

ビナロン(化学繊維)の雑巾1枚は1000北朝鮮ウォン(約16円)以上するが、これをわざわざ買い求めて掃除に励み、ボロボロになったら自分の着ている制服を雑巾代わりにして、掃除をし続けた。また、掃除に使う水がなくなれば、わざわざ遠くまで汲みに行って掃除を続けた。5月に入ってからも彼らは頻繁に掃除にやってきた。

ある朝、出勤した銅像管理所の責任イルクン(幹部)がその様子を目にした。そして、朝鮮労働党咸鏡北道委員会と咸鏡北道社会主義愛国青年同盟に伝えた。この「美談」は、教養事業(思想教育)に使う資料に掲載され、道内に広められた。

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しかし、「なんと素晴らしい若者たちだ!」と称賛する者がいるはずもなく、嘲笑のターゲットになってしまっている。

この掃除、実はクラスの担任教師に強いられてやらされたのが実情のようだが、生徒たちが自発的にやったことにされてしまった。

(参考記事:北朝鮮の若者たちにはバレている朝鮮戦争を巡る「ウソ」

実際は午前5時から行ったのだが、午前1時から夜通しで行っただとか、制服を脱いで雑巾代わりに使っただとか、話が大いにに盛られてしまったことで、ただでさえくだらないと考えられている銅像の掃除の「美談」が、余計に嘘くさく、バカバカしく感じられるという逆効果を生んでしまったのだ。

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高校生たちの反応はこのようなものだった。

「1着しかない制服で階段を拭いたら次の日は何を着て登校するのか」
「何も知らない子どもでもないのに、なぜ昔のやり方どおりにウソを混ぜて教育するのか」

青年同盟は、この「忠誠素行」をお手本にしようと呼びかけてはいるものの、何の効果もないだろう。ただでさえ今の北朝鮮の若者は、上からの押しつけを非常に嫌い、表向きはおとなしく従うふりをしていても、裏では思想教育の内容など全く信じていない。

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(参考記事:「あくび」と「私語」であふれかえる、北朝鮮の「復讐決議大会」

彼らが求めているのは、ビジネスや恋愛などプライベートを充実させ、誰からも強いられず自分の思い通りに生きる、韓国ドラマやハリウッド映画に描かれているような暮らしであり、北朝鮮当局の考えていることとは正反対なのだ。

そんな彼らの存在が体制を揺るがしかねないと危険視した当局は、反動思想文化排撃法と青年教養保障法を制定して教育と締め付けを強化しているが、面従腹背を煽るばかり。

これらの法律に違反して逮捕、収監される事例があまりにも多過ぎるなど、深刻な弊害が生じたため、未成年者に限って法適用を緩和する措置を取らざるを得なくなっている。

(参考記事:北朝鮮の少年9割が韓流を視聴する中で取り締まり緩和