「革命の名の下に処刑」金正恩が軍幹部を脅すビデオ映像の中身

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北朝鮮は8日に行った朝鮮人民軍(北朝鮮軍)創建75周年を記念する閲兵式(軍事パレード)で、過去最多の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を公開したとされる。

国営の朝鮮中央通信が公開した写真には同国最大級のICBM「火星17」が11基写っており、米カーネギー国際平和財団のアンキット・パンダ氏のツイッターへの投稿によると、ICBMの移動式発射台の数はこれまでのパレードと比べて最も多いという。同氏はまた、これだけのICBMに複数の核弾頭を搭載すれば、米国のミサイル防衛システムを飽和させるのに十分だと分析している。

一方、金正恩総書記は9日、閲兵式に参加した将兵と記念写真を撮った際、「強者になってこそ尊厳と名誉もとどろかすことができ、もっぱら勝利によってのみ自分の偉業の正当性も証明できる現世界で、強兵という盤石の上に建てられなかった繁栄の塔は空中楼閣にすぎない」などと述べ、自らが率いる軍の精強さを自賛して見せた。

しかし、北朝鮮軍の内実を見れば、いかに核戦力を強化しようとも、何らかの情勢の激変があれば、まさに「空中楼閣」のように崩壊してしまう可能性が常に存在していることがわかる。

北朝鮮軍は依然として供給に問題を抱えており、食糧の横流しなどの腐敗も相まって、末端兵士は飢えに苦しんでいる。部隊によっては兵舎の整備もままならず、兵士は地面に掘られた穴倉で生活せざるをえないあり様だ。

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そのような現状を詳しく知る将官や将校たちは、果たしてどこまで体制に忠誠を尽くせるのか。米韓軍とまともに戦ったら壊滅させられるのがオチであり、最近は将校のなり手も激減していると言われる。また現役幹部らの思想が揺らげば、体制不安に直結しかねない。

そこで、金正恩体制が用いているのが、得意の恐怖政治だ。

デイリーNKの北朝鮮内部情報筋によれば、軍総政治局の宣伝扇動部には「コンピュータ講演宣伝処」と呼ばれる部署があり、将兵を教育するための様々なビデオ映像を作っているという。

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例えばある映像では、5人の高級指揮官らが派手な服装や行動により腐敗、堕落したとして、一家もろとも政治的、法的処罰を受けたと説明。特に金日成軍事総合大学政治部の組織部長(大佐)については、「わが国の革命武力の指揮官の骨幹(エリート)を育てる最高の原種場(養成機関)の政治イルクン(幹部)の資格を喪失したこいつを、革命の名の下に断固として処断(処刑)した」と明らかにしたという。

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もちろん、こうした脅しだけで軍を統率できるものではない。ある脱北エリートはデイリーNKジャパンの記者に対し、北朝鮮の核兵器開発について次のように解説した。

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「金正恩の核開発には、軍の忠誠心をつなぎとめる目的もあるのです。戦力がどんどん劣化していく状況では、軍人たちも『こんなところにいても意味はない』と考えるようになる。しかし核戦力を誇示し、米韓に対して『いつでも使う』とポーズを見せて置けば、軍人たちもいったんは納得するというわけです」

それでも、一部の高官たちを除き、北朝鮮の軍人たちが全般的に苦しい状況に置かれており、金正恩体制を揺るがす「変数」となり得る存在であることに変わりはないのだ。