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「朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮労働党の領導の下にすべての活動を行う」

北朝鮮の憲法は11条で、朝鮮労働党の役割をこのように定めている。国内のすべての機関、企業所などありとあらゆる組織で、実質的なトップは朝鮮労働党の書記で、経営、技術などの専門知識を持った人はその下に置かれる。技術や知識よりも思想が重要視されるのだ。

国のすべてを司る党の威光は社会の隅々にまで届いていたが、最近は以前ほどではない。高級幹部ならともかく、ヒラ党員は様々な義務を課せられる割には、かつてのように羨望の眼差しで見られることもない。むしろ市場経済化に乗り遅れ、貧しい暮らしを強いられている。

(参考記事:北朝鮮国民が鼻で笑う、朝鮮労働党「末端細胞」での力の逆転現象

そんな中、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)市当局は、党員証の検閲(検査)を始めたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

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市内の青岩(チョンアム)区域の情報筋は、12月19日にすべての党員が党員証を携帯して出勤するように指示が下され、各機関、工場、企業所で党員証の保管、管理状態に関する検閲が行われたと伝えた。初級党書記が、党員を一人ずつ呼び出して、党員証の状態、ケース、鞄、ストラップなどについても点検を行った。このようなことは2013年に、新たな党員証が発行されてから初めてだという。

党員証事に参加するときを除けば、自宅に置いたままにするのが一般的だという。

(参考記事:「将軍様の肖像画を命がけで守れ」命令にウンザリする北朝鮮国民

さて今回の検閲が行われた理由だが、情報筋は翌日に知った話として、こんなことを伝えた。

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「青岩区域に住む男性党員が、酒を買うのにそのカタとして店に党員証を預けたが、15日経っても支払いにやってこないので、商人は党員証を地域の党委員会に提出したという」

当該の党員は何らかの処分を受けたようだが、他の党員からは怒りはおろか、むしろ同情の声が上がった。

「どれほど酒が飲みたければ、党員証を預けたのだろうか」

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お隣の松坪(ソンピョン)区域に住む住民は、青岩の翌日の12月20日に、党員証の検閲が行われたと伝えた。この地域では、細胞書記(党の末端組織の長)が月収の2%の党費を受け取る際に、党員証のチェックをしていたが、その上司にあたる初級党書記がチェックに当たるのは非常に珍しいことだとのことだ。

「かつて、男性なら誰でも党員を目指し、情熱を傾け努力したものだったが、今では党員証の威力が以前ほどではない」(情報筋)

情報筋の勤める企業所では、30〜40代で党員になろうとする人は一人もいないそうだ。上述の通り、メリットよりもデメリットの方が大きくなり、運良く幹部に登用されても、上役の失敗の責任を押し付けられてクビが飛ぶかもしれない。

そんな面倒を引き受けるよりも、商売で成功して豊かな生活と権力を手に入れたほうがいいというのが、拝金主義という「思想」が支配する今の北朝鮮だ。

(参考記事:兵役終え党員になっても「虚しい」…北朝鮮の若者を襲う絶望