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日本国憲法の第22条で定められている居住と移転、職業選択の自由。それが制限されているのが北朝鮮だ。進学や軍入隊など特別な理由がなければ、登録された地域から勝手に引っ越すことも許されない。職業も、ある程度は希望を聞き入れてもらえるとはいえ、原則としては国からあてがわれた職場で働かなければならない。

無断欠勤をしたり無職であったりすることは、そもそも違法行為だ。

行政処罰法第90条(無職、遊び人行為)

正当な理由なく、6ヶ月以上派遣された職場に出勤しなかったり、1ヶ月以上離脱した者は、3ヶ月以下の労働教養をさせる。罪状の重い場合には、3ヶ月以上の労働教養をさせる。

だが、実際には「8.3ジル」と言って、勤め先にワイロを渡すことで出勤扱いにしてもらい、その時間にほかの商売を行い現金収入を得る行為が当たり前のように行われている。当局は、これら職場離脱者、無職者とのたたかいに乗り出したと、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

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道内の安全部(警察署)や検察所に対して先月17日、指示文が下された。その内容は次のようなものだ。

「職場離脱者、無職者が全国をさまよい、強盗を行い、社会秩序に混乱を起こしている」「各機関は、職場離脱者、無職者を殲滅するために、掃討組を立ち上げ、強力犯罪など反社会主義、非社会主義行為を根絶やしにせよ」

情報筋によると、以前は職場などの朝鮮労働党委員会が責任を持って、職場離脱者や無職者に対する教養事業(思想教育)を行ったうえ、生活を保証せよとするのが当局の方針だった。それでは効果がなかったのか、厳罰化へと方針が変更されたようだ。

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コロナ鎖国下での経済難と食糧難で治安が悪化し、凶悪犯罪から窃盗など様々な犯罪が多発しているのは確かだが、当局はその原因が、職場離脱者と無職者にあるとみなしているようだ。

(参考記事:鎌で農民を切り裂き殺害…飢える北朝鮮で猟奇事件

指示を受けて、清津(チョンジン)市など道内各地の安全部や検察所は先月20日、検事1人、安全員(警察官)2人、元軍人の糾察隊(取り締まり班)4人からなる「掃討組」を立ち上げた。

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3カ月以上出勤していない者、連絡が取れない者、職盟(朝鮮職業総同盟)や青年同盟(社会主義愛国青年同盟)など組織に所属せずに生活している者に対する取り締まりを始めた。中でもターゲットとしているのが、上述の「8.3ジル」を行っている者だ。生活苦で出勤できない者より、商売のために出勤しない者の方が思想的に問題があるとみなしたためだ。

摘発された者は、誰も行きたがらないため深刻な労働力不足に陥っている農村や炭鉱に、家族もろとも追放されるとの噂が流れている。

(参考記事:都市部の余剰労働力を農村に送り込む北朝鮮式「リストラ」

8.3ジルで儲けている者は、職場や治安機関の幹部と癒着していると言われている。昨今の食糧難で、幹部ですら生活苦に追い込まれている中、摘発されてもワイロでもみ消し、それができるほどの力もカネもない零細な商人ばかりが摘発され、農村や炭鉱送りになることは、目に見えている。

(参考記事:ワイロが途絶え生活苦に追い込まれた北朝鮮の幹部たち