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氏名: キム・ウネ
年齢: 30代後半
職業: 商売
居住地: 平安北道 平城

キム・ウネさんは北朝鮮最大の物流都市である平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)に住んでいる。商売をしてお金を儲けたが、貨幣改革で全財産を失いました。再起する力もないと言います。それで中国の親戚に助けを求めるため中国を訪問しました。5月現在、未だに望むだけのお金を稼げていないので、在留期間は過ぎましたが、食堂で働いています。

-どこで商売をしているのですか?

-平城の卸売市場でしている。幹部の妻以外の女性はみんな商売をしている。労働党員も商売をするくらいだ。商売をしている人が、人民班30代のうち半分以上だ。

-何を売っているのですか?

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-明け方に平城の卸売市場に行って、お米や眼鏡を平壌の走り商人(市場と市場の間を行き来しながら、物を供給する役割をする人)に渡している。1日に7000ウォンくらいの稼ぎになる。平壌の市民達には市民証があるので、平城までは通行証なしで来ることが出来る。月給の3000〜4000ウォンも足すと、ひと月に1万5000ウォンほど稼いでいる。うちは基本的な生活は出来ている。でも中間層の生活にはまだ手が届かない。1日3食食べているが、子供達にお金をあげなければいけない。そのせいで大変だ。

-貨幣改革による影響は?

-貨幣改革以前にやっとの思いでお金を集めた。息子を大学に送って家も買おうと思い、2500ドルを集めた。明け方に寝ることも出来ず商売をして集めた。でも貨幣改革以降にそのうちの200ドルも残らなかった。他の人もみんな同じだ。大きく商売をしていた人はお金が沢山飛んでいった。そのせいで自殺しようとした人もいた。貨幣改革のせいで商人がやられた。資金主は大丈夫だったが、走り商人がやられた。100:1の比率で10万ウォンまで変えてくれて、その後1ヶ月間は私達も豊かに暮らせるようになると思っていた。お金を燃やすなと言われ、国家商業も再開され百貨店も営業をはじめると言っていた。商人達は国家の言葉だけを信じ全ての商品の価格を下げた。1ヶ月ぶりに平壌第1百貨店が営業を始めたが、100:1価格ではなく元の値段と同じくらいだった。市場商人達はみんな平壌第1百貨店だけを注視していたが、これはダメだと思ってまた価格を上げた。私の故郷は新義州だ。旦那が死んで残った財産を処分して平城に来たら、それが全部破紙になってしまった。貨幣改革以降人民の不満が大きかった。(普通なら)人民はデモをしなければならないが、北朝鮮ではそうすることが出来ない。朴南基(パク・ナムギ)は反党革命分子なので銃殺された。人民も馬鹿じゃないから国家がなんと言っても信じない。

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-貨幣改革以降、住民達は党や国家のことをどう思っていますか?

-信じていない。人民達は「独裁政権」という単語自体も怖がっていたのに、今ではやたらめったに口に出すようになっている。貨幣改革は国家が国民を騙した形になった。今は国家を端から信用していない。人民が自分の力で稼がなければいけない。外貨を使わせない、市場を統制すると言われたとしても、人民達は聞かない。自分達の力で勝手にやっている。

-金正日は人民の生活にどのくらい関心を持っていると思いますか?

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-平壌駅の前に1世帯当たり部屋が5つある28階建てのアパートを建てたというニュースをテレビで見た。金正日将軍様がくださった「プレゼント用」の家らしい。そのうちの2棟を国立交響楽団、天の川楽団にあげた。将軍様が俳優達のアパートを直接現地指導した。私はそれを見て気分が悪くなってテレビを消した。科学者、技術者も家がない状況で、その上ごはんもまともに食べられていないというのに、部屋が5つもあるアパートを建てることは実情にそぐわないじゃないか。人民達をだましていると思う。部屋が2つのアパートをもっと沢山建てて1世帯でも多く住まわせてあげなければならないのではないか。

-市場で取引をするときの基準貨幣はなんですか?

-すべての基準はドルと中国の元だ。外貨にあわせて物価が上がったり下がったりする。お米の価格も上がったり下がったりする。財産は全て外貨で持っている。私達はもう国家を信じていないので、ドルを集めている。(国が)使えなくしようとしても手に握っていなければいけないと思う。アメリカが崩壊しない限りドルは有効だ。中国に来て思ったことは、アメリカは崩壊しないということだ。北朝鮮は人民もひどいが国家にも信用がない。親しい友達同士で「将軍様は歌を聞いて芸能人の公演を見る。汽車に乗って旅行に行く。どうしてあんなに恵まれているんだろう」ということを話したこともある。

-韓国のドラマを沢山見ましたか?

-若い人達は国家が統制をしてもこっそり見ている。「天国の階段」と「男の香り」というドラマを見た。「天国の階段」は元山にある夫の実家に行ってビデオテープで見た。息子が若いのでよく買ってくる。以前はCDだったが、今はメモリーを買ってくる。最近はドラマをCD録画機で見ている。目の覚めた人はみんな見ている。

-取り締まりにひっかかったらどうすのですか?

-どれだけ探知機を稼動させても、CD録画機にメモリーが入っているだけなのでひっかからない。若い子達に対する統制が多い。ひっかかると平壌から追放される。それで様子を伺いながら見なければならない。それでも取り締まりをする人が家一軒一軒に入ることはできないから。最近のものも全部見ている。

-韓国の芸能人の中で知っている人はいますか?

-ヒョン・ビン、クォン・サンウ、イ・ボムス、コ・ヒョンジョン、ハ・ジウォンくらいは知っている。私が好きな俳優達はわかる。イム・ヒョンシクは演技が上手だ。自分が受け持った役のキャラクターをちゃんと生かしている。イ・ボムスやハ・ジウォンも演技が上手い。イ・スンジェも知っている。ヒョン・ビンよりもクォン・サンウが魅力的で本当に好きだ。(クォン・サンウが出ているドラマは)10回くらい見た。高位層の幹部達もみんな韓国ドラマを見る。保衛部の人も家に帰るとドラマを見る。統制をする人がいないから普通に見ている。自分達も見ているんだから、口では強く言っても実際は強く取り締まることが出来ない。

-軍隊の状況はどうですか?

-一番胸が痛むのが軍隊の話だ。平城にある部隊の一般兵士達は大部分が栄養失調だという。女は軍事服務が6年なのだが、部隊に行って見てみると少女達の顔に血の気が一つもなかった。1人の少女に会ったが、あまりにも不憫なのでいつ軍隊に来たのかと聞くと、去年来たと言った。胸とおしりに肉がほとんどついていなかった。女の子なのに顔が真っ黒だった。軍隊に行くと『ドロ団子期間』というのがある。栄養失調にかかる期間のことだ。誰もが栄養失調にかかったり治ったりする。食べ物がひどく仕事を沢山させるのでそうなるようだ。平壌市以外でお米を食べている軍人はいない。トウモロコシの粉と、トウモロコシの粒をまぜて食べている。ジャガイモを何個かあげたりまだ青いトウモロコシを二穂ずつあげている。それで軍隊に行くと盗みを覚えるようになる。

-軍隊で栄養失調になって死ぬこともあるのですか?

-軍隊に行って死ぬケースがとても多い。軍隊では大体「訓練中に死んだ」と言う。祭祀の時父母に知らせて部隊で治療をすると言うが、結局みんな死ぬ。体が虚弱な状態で結核にかかったり他の病気にかかって死ぬ。

-軍人達と住民達の関係はどうですか?

-昔は人民軍隊と言っていたが最近はそうではない。市場で軍人達が物を持ったまま逃げると、捕まえてひっぱたくこともあるが、逆に盗みをした軍人に殴られることもある。住民達は軍人達の大変さを知っているので、苦痛を受けても大きな問題にしないこともある。

-平城での極貧層の比率はどれくらいですか?

-商売が出来ずお金がないことが貧しいということじゃないのか?賢くない人や労働者世帯がそうやって暮らしている。ある女性は平城に物を買いに来ているのに、毎日食べ物の心配をしているという。平壌では配給をくれると言うが、配給所の前に深夜の1時から並ぶという話も聞いた。配給所で寝ることもある。平壌でさえそうなのだから、平城の人には聞くことさえばかばかしい。それでも他の地方よりはましだ。

-下層民達はどうですか?

-うちのまわりでは基本的に3食食べている。3食食べることが出来ない人もいる。賢くないせいで生活出来ない人も多い。

-飢え死にした人を見たことはありますか?

-去年の7月に栢松里に行ったのだが、ある子供と母親が死んだ。長いこと食べるものがなく辛いので殺鼠剤を飲んだ。子供は賢かったが父親がいなかった。女性は軍需工場の労働者だったが、くそまじめに工場にだけ勤めて労賃だけで生活していた。軍需工場に勤めていたので配給にだけ依存していた。そうするうちに配給が切れたのでそうなった。世帯主だから絶対に工場に通わなければならなかった。かわいそうだ。

-直接死ぬ場面を目撃したのですか?

-薬を飲んですぐには死ななかった。母親はすぐに死んだ。でも息子は「死にたくないよ」、「死にたくないよ」と言って医者にすがりついたという。母親がごはんを食べようと言うので食べたらそこに殺鼠剤が入っていたという。先生が軍隊の病院まで連れて行ったが、結局助けることが出来なかった。先生が息子に「なんで薬を飲んだのか」と聞くと「僕は薬を飲んだことはないしわからない」と言ったそうだ。助けてと言っていたのに結局死んでしまった。卒業を控えていたが、中学校の最優等生として上級の子供達が通う学校に行こうとしていた。軍隊に行ける状況ではなかったし体も弱かった。試験の成績はよかったが、お金がなく大学にも行けないことになった。労賃ももらえず食べ物もないので、母親が考えた末にこんな風にして暮らすなら死のうと決心したようだ。(北朝鮮では)制度だけが無料教育だ。大学入試の際、100人を選ぶとすると700人が試験を受ける。大学に行くためにはその中で生き残らなければならない。それで学長や(党)秘書にお金をあげて受からせてくださいと言う。大学の教員もお金を要求する。実際は勉強の出来る子達が大学に行けない状況だ。

-金正恩についてどう思うか?

-若い人に何が出来るんだ。首領様のことを思い出す。そのときはよく暮らせていた。金正恩は(金日成が)祖国を解放したときと見た目が見ている。そっくりだがあまりにも幼い。苦労したことがない人をどうやって権力の座につかせるのか。金正恩は苦労したことがない。人民達の苦労もわかっていない。資本主義経済の勉強をした人が(政治を)しなければならないという言葉をバスの中や食堂でよく聞く。政治をどうしてこんな風にするのか。奸臣が多いからだと言う人もいる。商人以外の人もこういう話をする。少しではあるが確実に、発言の自由が許されはじめている。

-住民達は張成沢のことをよく思っていないと言いますが。

-張成沢(チャン・ソンテク)に対してはあまり関心がない。中央党の行政部長だが、金慶喜(キム・ギョンヒ)の旦那くらいにしか思わない。「張成沢は自分の立場をよくわきまえている」と評価する人がいる。金慶喜の役割が大きいようだ。金慶喜は将軍様の妹だが、(金正日と)いつも一緒に行動してよく世話をしている。将軍様のまわりにスパイや反革命分子が多いので、これからは信じる人がいないから家族同士助け合わなければならないと言ったそうだ。金慶喜同志の役割が相当大きいようだ。

-(金正日を非難する)落書き事件について聞いたことはありますか?

-年に1〜2回起こる。聞いたところによると、去年の3月に党を批判する内容が書かれたことがあった。結局捕まったが、大学生だったそうだ。その後も、平城にある革命史跡地の壁に金正日を罵倒する落書きがされていた。そういったことが起こると、噂が千里馬のように瞬時に広がる。

-その話を聞いた住民達の反応は?

-別に何も言わない。正しいことを言ったという人もいる。

-北朝鮮ではなぜデモが起こらないのですか?

-デモをすると孫の代まで死に絶えてしまう。市場(の統制)も全て方針だと言うが、金正日だけ知らなかったという。それをどこの誰が信じるのか。独裁がひどいからといってデモが起こっても、戦車で押しつぶされるだけだ。

-平城でも韓国のテレビが放送されていると聞きましたが。

-手のひらサイズのテレビがある。韓国製で、衛星を通して36のチャンネルが視聴出来るという。衛星ゴムアンテナを回して見ることが出来る。ある人が見せてくれたのだが、すぐにしまうように怒られた。危険だからだ。聞いたところによると、中国を行ったり来たりする人達を通じて入ってくるという。

-金正日は改革開放をすると思いますか?

-来年強盛大国になってから「強盛大国になったのか」と言うだろう。住民達が立ち上がればいいのだが、そうすることが出来ないので心が痛む。開放すればいいが絶対にしないと思う。韓国については悪いことばかりを教えている。来年何かが起きそうだ。

-外部の食糧(米)支援についてはどう思いますか?

-支援物資が人民まで届かない。軍に入る分を10%だけでも回せば人民の生活はよくなるが、果たしてそうするだろうか?

-道党の人々はどう暮らしていますか?

-道党の幹部は豪華な住宅に住んでいる。そういう人達のアパートは一般とは別の電気線を使っているので、停電があまりない。生活水準が私達よりも格段にいい。

-平城の富裕層の生活水準はどれくらいですか?

-お金のある人達は韓国製品を使っている。化粧品も全部韓国産を取り寄せている。権力のある人や商売でお金を稼いだ人達は秘密資金を持っている。保衛部や軍部も権力があるので秘密資金を持っている。彼らは市場でも毛皮のコートやチンパジ(足にまとわりつくズボン)などの最高級品を買う。(北朝鮮当局が)統制しているが、韓国風に髪を切るし、言葉遣いも韓国風を真似している。

-韓国の言葉遣いが流行っているのですか?

-今では「オッパ」と呼んだりもする。私の子供達も韓国の言葉遣い、ソウルの言葉遣いをよく使う。特に平城は流行りが早いので、ワンピースも流行っているし、韓国風の服をよく着ている。映画俳優やドラマに出てくる人のように長い髪をたらして、男はヒョン・ビンのように髪の毛を立てたり髪を染めたりもする。短いスカートもはくが、国は「南朝鮮のバカ風」の真似をするなと取り締まっている。