公開処刑も怖くない…金正恩と「上級国民」のやりたい放題

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朝鮮人民軍(北朝鮮軍)で、徴兵対象者の配属先をカネで売買するという大規模な不正行為が摘発された。しかし、北朝鮮ならではの理由により、首謀者への処罰が軽いもので済まされてしまった。

デイリーNK内部情報筋によると、今月初めに開催された人民軍党(朝鮮労働党朝鮮人民軍委員会)の総会で、第8回党大会後に行われた隊列整理事業(人事)に関する報告が行われた。

報告は、軍総参謀部の隊列補充局(人事担当部署)のパク副部長(上佐)の違法行為について指摘している。13の道、直轄市、特別市の軍事動員部長いずれとも親しく接するほど、隊列補充局での勤務が長いパク氏は、入隊招募(徴兵)に関する権限と、上官との顔面情実(コネ)を利用し「軍の威信を傷つけた」ということだ。詳細は後で述べるが、人事がらみでカネを受け取っていたということだ。

それも、相当に大規模にやっていたようで、普通なら公開処刑にされてもおかしくないぐらいの罪状だ。

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それでも、報告書にはパク氏とコネがある上官について、名前すら記載されていなかったことで、軍内部で憶測が広がった。やがて、軍の幹部やその家族を通じて、上官の正体が明らかになった。

その人物とは、全在善(チョン・ジェソン)氏の息子だった。全氏は軍の第5軍団長、副総参謀長、そして1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の時期に、最前線の第1軍団長を歴任し、次帥の座まで登り詰めた人物だ。

金正恩氏が、2016年5月の朝鮮労働党第7回大会に当たって述べた開会の辞で、全氏が鬼籍に入っていることが確認できる。

(参考記事:朝鮮労働党大会での金正恩第1書記による「開会の辞」(全文)

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息子とは言え、全氏の名前を報告書に出すことは、「将軍様(金正日総書記)と元帥様(金正恩氏)の権威毀損問題と直結するため、名前を出さずに隠した」というのが、情報筋の説明だ。

(参考記事:公開処刑も怖くない…金正恩「赤い貴族」のやりたい放題

不正行為の概要は次のようなものだ。

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この息子は総参謀部作戦局8処(一般行政処)の副処長のポストにある大佐で、パク氏とは金正日軍事政治大学の同期。2人は、国境警備司令部の後方総局(補給担当部署)、425訓練所の後方部、総参謀部、保衛司令部、総政治局直属の警務員(憲兵)や運転手など、勤務が楽な部隊に配属させる見返りに、相当額のワイロを受け取る「入隊商売」を行い、多額の外貨をせしめていたことが明らかになった。

運転手、警務員、後方部の糧食、被服、燃油、炊事、幹部部または隊列部(人事担当部署)の順にワイロの価格を決めて、取り引きをしていた。

全副処長が、徴兵対象者本人と親の名前、学歴、希望勤務地をまとめた文書を作成し、パク副部長に送る。パク氏は全氏を通じて当事者に「価格」を伝え、カネを受け取るという流れで取り引きを行なっていた。

文書の受け渡しは、全氏専属の運転手(上尉)とその妻が行い、受け取ったカネは全氏4割、パク氏4割、運転手夫婦2割の割合で山分けしていた。

パク氏と運転手は、出党(労働党からの除名)解任、撤職(更迭)の処分を受け、家族もろとも地方に追放された。比較的豊かな首都・平壌から追い出され、山奥の農場、炭鉱の閑職に飛ばされるという、一種の島流しだ。

ところが、全氏に対する処分だけ異なった。

「彼は副処長のポストから追われて少佐に降格させられ、91訓練所の後方倉庫の一般参謀になった。平壌の西城(ソソン)区域の舎宅(専用住宅)からは追い出されたが、万景台(マンギョンデ)区域に引っ越しただけで、軍服を脱がなかった(軍をクビにならなかった)」(情報筋)

全在善氏の息子という理由だけで、処刑どころかごく甘い処分で終わった。これについて、軍内部では様々な憶測が飛び交っているとのことだが、金氏一家との関係が深い家族とあって、下手に不平不満を口にすれば、どんな目に遭わされるかわからない。軍関係者は、理不尽に感じつつも、下を向いて黙っているしかないだろう。

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