文在寅を口先で手玉にとる「最愛の妹」のねらい

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韓国統一省は先月30日、北朝鮮の金正恩総書記の妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党宣伝扇動部副部長が、北朝鮮のミサイル発射を受けた文在寅大統領の発言を激しく非難する談話を発表したことに対し「強い遺憾の意」を表明した。

さらに同省関係者は記者団に対し、「一部の表現に対話と協力の相手に対する最低限の尊重や基本的な礼儀を逸脱したと判断される部分があり、遺憾を表明した」と強調した。

金与正氏の強硬姿勢に韓国政府が強く反発するのは、北朝鮮が昨年6月に脱北者団体の対北ビラ散布への報復として、与正氏の主導で板門店の南北共同連絡事務所を爆破して以来だ。

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だがそもそも、金与正氏の談話は韓国側を挑発して反発を引き出すため、巧妙に仕組まれたものである可能性がある。

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北朝鮮の国防科学院は25日、弾道ミサイルである「新型戦術誘導弾」の発射実験を行った。これに対しては国際社会から、国連安全保障理事会決議に違反するとの批判が起きるが、北朝鮮は「特定の国の自衛権を制限する二重基準だ」と反発。この過程で文在寅氏も、北朝鮮のミサイル発射は「対話に困難をもたらす」と主張していた。

一方、文在寅氏は昨年7月23日、国防科学研究所を訪問し、新型弾道ミサイルの発射実験成功を、「韓半島の平和を守る」ものだと称賛していた。

金与正氏は今回の談話で、このときの文在寅発言を詳細に引用しつつ、「北と南の同じ国防科学研究所で行った弾道ミサイル発射実験について、自分らが行ったのは朝鮮半島の平和と対話のためのものであり、われわれが行ったのは南の同胞の懸念をかき立て、対話の雰囲気に困難を与える、決して好ましくないことだと言うのだから、その鉄面皮さに驚愕を禁じ得ない」と非難。続けて「非論理的で厚顔無恥」「米国産のオウム」などと激しくなじっている。

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つまり、北朝鮮は文在寅氏の言動を詳細に検討したうえで、今回のミサイル発射に対し何らかの発言が出るのを待ち構えていたのではないか、と思えるのだ。

また、金与正氏は2019年12月以降、党組織指導部に籍を置いていると見られていたが、今回の談話により党宣伝扇動部の所属であることが明らかになった。宣伝扇動部こそが、対外的な心理戦を担う部署であり、こうした言葉による挑発も「本業」の一部だ。金正恩氏が、最側近のひとりであり「最愛の妹」である金与正氏をこのポジションに据えたのは、韓国や米国に対する挑発を強めるためではないだろうか。

北朝鮮は、人権問題で金正恩体制を批判するバイデン政権とは当分、対話の機会はないと考えているはずだ。今は、同じく米国と対立を深める中国を後ろ盾に、緊張を煽って存在感を高める局面であると認識している可能性が高い。

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そうならば、すでに任期が1年少しとなった文在寅政権はいじり易い相手だ。金与正氏の文在寅攻撃は、今後も強まることが予想される。