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北朝鮮の社会主義憲法は、信教の自由について次のように定めている。

公民は信仰の自由を持つ。この権利は、宗教の建物を建てたり、宗教儀式をなどを行うことを許容することで保証される。宗教を外国勢力を引き入れたり国家社会秩序を害するのに利用できない。

自由の部分よりも、制限の方に力点が置かれていることがわかる。

北朝鮮は、建国前から「すべての宗教は迷信とも同じで、それを信じる者は階級意識が麻痺し、革命の意欲がなくなる一種のアヘン」と規定している。また、社会科学出版社の政治辞典は、宗教について「自然および社会的力が人々を支配すると人々の頭の中に間違って反映された意識の形態」と説明している。

国際社会の目を意識したのか、1990年代からは書籍から宗教に関する否定的な記述を削除するようになったが、国内での宗教活動は厳しく禁じられている状況に変わりはない。

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しかし、取り締まりを避けつつ、病気の治療を行ったり、運勢を占ったりする行為は行われていた。より広く広まったのは、人々の生活が困窮を極め、政府への期待が消え去った1990年代中盤以降だ。

宗教は、発覚すれば処刑や収容所送りなどの厳罰に処せられる一方で、占いは軽い処罰で済まされるため、心理的抵抗感が低い。革命の重要な担い手であるはずの幹部も、占い師を訪ね、自分の運勢を占ってもらう。バレたら「運命も知ってこそ開拓できる」「神は信じているが、朝鮮の神だ」などと苦しい言い訳をする。

朝鮮のみならず、どの文化圏にも迷信が存在する。それが人々の生活を縛り付けたり、犯罪に走らせたりするなど、迷信や宗教の否定的な側面があることは事実だ。

(参考記事:北朝鮮人民を震え上がらせた連続猟奇殺人鬼パク・ミョンシク

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その一方で、宗教や迷信などは、人々の心の慰めにもなっている。

北朝鮮で占いが流行る理由について、脱北者たちは、最高指導者に対する絶対的な信頼が崩れたことを、最大の原因だと口を合わせる。生活は苦しく、指導者、党、国も頼りにならないから、占い師を訪ねるのだという。医療システムの機能低下や、海外からの情報が制限されていることも一因だ。

「息子が熱が出したので小児科病院に行ったが、医者に診せたら『キシン(鬼神、幽霊の意)病だ』と、有名な占い師を紹介してくれた」(ある脱北者の証言)

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北朝鮮の人々は、家族の誰かが病気になったり、商売を始めたりするとき、墓を作る場所を探すときなどに、占い師を訪ねる。何か起きればとりあえず占ってもらうという人もいる。

両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)出身の脱北者、ヤンさんは、占いについて、苦しい生活の中で一息つくようなものだとして、このように説明した。

「食べていくだけでも大変なのに、コメ5キロを持って占い師を訪ねるのは、たとえ言葉だけであっても、希望を見たいからだ。占いの全部が当たっていないとしても、『こうやればいいことが起きる』と言われるだけで、勇気が出る」

当局は、占いの取り締まり、思想教育に躍起になっている。最高学府の金日成総合大学の講師に、政治講演会で「占いは非社会主義的行為」という内容の講演をさせている。

(参考記事:北朝鮮の占い師「次の権力者は張成沢氏」

また、迷信を否定するストーリーの「城隍堂」(ソンファンダン、お堂)という演劇を上演したりしている。

苦しい生活の中でも、城隍堂に豚肉、酒などお供えを欠かさない信心深い女性が、地主に騙されそうになるが、「この世に幽霊などいない、自分の運命を決めるのは、(幽霊や先祖ではなく)自分自身だ」という青年の言葉を聞き、城隍堂を打ち壊すというのが、劇のあらすじだ。

ところが、今の北朝鮮の人々は、心の中に、城隍堂を再建しているのだ。