国内でも国際社会でもそっぽを向かれる「文在寅の陳腐化」

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韓国の文在寅大統領は30日に主宰した首席秘書官・補佐官会議で、次のように発言した。

「すべての公職者は国民だけに奉仕すべきで、より良い国づくりのための役割を果たすべきです。所属する部署や集団の利益ではなく、共同体の利益を重んじる先公後私(滅私奉公)の姿勢で危機を乗り越え、激変の時代を切り開いていかねければなりません。過去の慣行や文化から抜け出せなければ、急変する世界的潮流から落伍するしかないでしょう」

何のことかと言うと、最近の政権と検察の対立を巡り、検察側に「態度を改めろ」と言っているのだ。

秋美愛法相は先月24日、与党や政府高官の不正に鋭く切り込んできた尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長の職務執行停止を命じた。するとこれに対し、検察側から猛烈な反発が出た。およそ2000人とされる全国の検事のほとんどが秋美愛氏に対し、職務停止命令の撤回を求めたのだ。

この間、文在寅氏は「法相と検事総長の対立は大統領が収めるしかない」とする世論を無視するかのように、沈黙を守ってきた。それが検察の反発が極大化するや、やっと口を開いたのである。

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しかし文在寅氏のこの判断は「誤算」である可能性が高い。捜査権と起訴権を独占してきた韓国検察は、自らと利害が対立する勢力を法的に葬り、実質的に同国で「最強の権力」として君臨してきた。だが現政権になって以降、そうした権力の解体は徐々に進み、昔とは違う姿になりつつある。メディアも世論もそれを認識しており、検察叩きは政権・与党がらみの事件を潰すためと見る向きが多い。下落を続けてきた文在寅氏の支持率は今後、いっそう急降下するかもしれない。

文在寅政権が誕生時から掲げてきた大義名分は、時間の流れと情勢変化の中で陳腐化しつつあると言える。

その最たる例が、対北朝鮮政策だろう。文在寅氏と北朝鮮の金正恩国務委員長(朝鮮労働党委員長)が2018年9月の南北首脳会談に合わせて採択した共同宣言では、2032年五輪の南北共同開催を招致するため協力するとうたわれている。これを受け、韓国政府は五輪の南北共催を推進している。だが、残忍な人権侵害を改めようとしない北朝鮮で五輪開催が可能だと考える向きは、国際社会にはほとんどいないだろう。

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それでも、トランプ米大統領と金正恩氏の対話により、北朝鮮の非核化に期待を持てたときはまだ良かった。非核化をきっかけに、北朝鮮が国際社会の輪に深く加わるようになるなら、今後の変化に淡い期待を抱くことが出来たからだ。

今となっては、ことがそのように運ぶ可能性は相当に低くなった。それにもかかわらず、文在寅政権は北朝鮮の人権侵害を非難する国連委員会の決議に共同提案国として加わらないなど、以前と変わらぬ姿勢で北と向き合っている。しかし、朝鮮半島情勢の一方の当事者である韓国政府が北朝鮮の人権問題に関心を持たないなら、状況が良くなる可能性は「ゼロ」にしか見えないではないか。実際、北朝鮮の人権問題に対する文在寅政権の姿勢には、国連報告者や欧米の人権団体から強い批判が出ている。

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原因はそれぞれ異なるにせよ、文在寅政権が誕生時に打ち出した政策の方向性は、その後の情勢変化を受けて「逆回転」しているものが多いように見える。この状況で、文在寅氏が今後も「誤算」を繰り返すなら、政権は国内でも国際社会でも支持を失い、極めて大きな困難に直面するのではないか。