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韓国のNGO、環境運動連合の調査によれば、朝鮮半島と中国大陸の間にある西海(黄海)の干潟の面積は韓国2140平米、北朝鮮2300平米、中国8180平米、計1万2620平米に達し、世界的な規模となっている。実は韓国の仁川国際空港も、島と島の間の干潟を埋め立ててできたものだ。空港とソウル市内を結ぶ長さ4420メートルの永宗大橋の上からは、果てしなく続く干潟が、赤いシチメンソウに覆い尽くされた光景が見られる。

干潟を生み出すのは、100メートル前後の浅い平均水深だが、それは同時に大きな干満の差を生み出す。そのため、潮干狩りに夢中になっているうちに、海に取り残される事故が後を絶たない。そして最近、北朝鮮の浜辺で労働者12人が一度に溺死するという悲劇的な事件が起きたと、平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

徳川(トクチョン)勝利自動車連合企業所は、北朝鮮の自動車生産の8割を担う大工場で、2万5000人の従業員が働いているが、政府はこの工場を含む全国の1級、2級工場、企業所に対して、外貨稼ぎを行えとの指示を下し、ノルマを課した。

工場は、従業員を中国との国境に程遠い鉄山(チョルサン)の海に派遣した。中国に輸出する貝類を採らせるためだ。

北朝鮮は、国連安全保障理事会が2017年8月に採択した制裁決議2371号で、海産物の輸出が禁じられている。政府と企業が一丸となって制裁破りの密輸に邁進するほど、北朝鮮の外貨事情が逼迫していることがうかがえる。

(参考記事:中国、北朝鮮産海産物の摘発を強化…制裁で禁輸措置

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労働者は、干潮の時間に合わせて木造船に乗り、沖にある干潟に出て、貝採りをしていた。満潮になる前に船に乗って戻る手はずだったのだが、潮が満ちてくるのに気付かず貝取りに夢中になっていた労働者が取り残され、12人が溺死してしまった。現場では同様の事故が多発しているとのことだ。

遺族は、企業所の幹部に対し「外貨稼ぎに目がくらんで労働者の命は眼中にない」「12人の命をなぜそんなに軽く考えるのか」「12人を生き返らせろ」と激しく抗議した。

しかし、企業所は「事故は本人たちの不注意のせい」と、一向に責任を認めようとしないという。そればかりか、このままでは外貨稼ぎのノルマを達成できないとして、亡くなった12人の代わりの人員を投入し、危険な貝採りを続けさせている。

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しかし幹部としても、責任を認めれば重罰が下されるおそれがある。生き残るためには責任を認めてはならないのだ。北朝鮮の重罰主義が、真相究明や被害者救済を遠ざける事例は枚挙にいとまがない。

(参考記事:再開発「強制立ち退き」に不満募らす北朝鮮国民。その行き着く先は…

これに対して遺族は、中央党(朝鮮労働党中央委員会)に信訴を行うと激怒している。信訴とは、不正行為の内部告発制度のようなもので、理不尽な目に遭わされた場合の数少ない救済措置の一つだ。事案の解決、関係者の処罰につながる可能性がある一方で、もみ消された上で逆に被害者がひどい目に遭わされることもある。

(参考記事:息子の交通死亡事故をもみ消した北朝鮮の悪徳警官