コロナ封鎖でまた処刑…金正恩の「特注物資」を盗んだ罪

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3月末、北朝鮮が約2カ月にわたって続ける国境の封鎖措置を一部緩めていると、複数のメディアが報じた。北朝鮮は新型コロナウイルスの侵入を防ぐため、1月末に国境を封鎖。貿易のほとんどを依存する中国とのヒト・モノの往来もほぼ途絶えていた。

しかし3月末になって、中朝国境の一部でトラックが両国を行き来するのが観測された。北朝鮮国内での物資の需給ひっ迫や、金日成主席の生誕記念日である「太陽節」(4月15日)が迫っているためではないかと分析された。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、この動きについて次のように語っている。

「3月23日、10台の貿易トラックと国際貨物列車によって搬入された国家戦略物資は、太陽節に際して高官たちに贈る食料品だった。検疫と消毒を経た後、倉庫に運び込まれた」

情報筋は「高官たちに贈る」と言っているが、贈り主は誰か。ほかでもない、金正恩党委員長である。

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その事実を知ってか知らずか、3人の不届き物が現れた。物流担当の幹部と食料品工場の幹部たちが組んで、食用油3トンを市場に横流ししたのだ。モノ不足の中、平安北道の市場に中国産の食用油が出回っているとの情報は、当局によってすぐに察知された。

3人は国家反逆罪に問われ、銃殺された。コロナ封鎖の非常事態下で、しかも金正恩氏の「特注物資」に手を付けたとあって、3人は裁判も経ずに処刑されたという。国家反逆罪の罪名からもわかるとおり、3人は窃盗によって死刑にされたわけではない。金正恩氏の権威に逆らったために、抹殺されたということだ。

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RFAの情報筋は、3人を国家反逆罪に問うよう指示したのは、金正恩氏本人だったとも伝えている。

しかし、そのようなリスクを認識していたならば、3人は果たして、こうした物資の横流しに手を染めただろうか。彼らは物資の素性を知らず、いつもの習い性でことを運んだのかもしれない。

あるいは北朝鮮国内で物資のひっ迫が凄まじく、カネ以外の何らかの理由で横流しに動いてしまった可能性もある。1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の最中においても、労働者を飢えから救うために工場の資材を外国に売った幹部が、犯罪者として処刑された出来事があったとされる。

(参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」