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北朝鮮を訪問したキム・ヨンオク氏(スンチョン大学教授)が10月8日付の中央日報で、金日成大学のソン・チャリプ総長との対話の内容を公開した。

この記事にはキム氏が“フリードマンも勉強したのか”と質問すると、ャ淘穀キが“ケインズ、フリードマンの流れはすべて基礎ではないか”と答えたと書かれている。

そのまま聞けば、北朝鮮の大学生と知識人が、現代の資本主義経済理論や現代思想に関する本を自由に勉強することができるかのようである。

だが、これは事実とは違う。中央党の幹部や北朝鮮で特別な恩恵を受けている人だけが、現代思想に関する外国の本を読むことができる。

金日成大学に通い、北朝鮮を脱出したキム・ミョンチョル氏(仮名・32)はこう言う。

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“平壌の人民大学習堂の4階には‘非公開図書室’というのがある。そこにある外国図書は、中央党の幹部や特定の人だけが読むことができる。おそらくャ淘穀キも、‘非公開図書室’でケインズやフリードマンの理論を読んだはずだ”

更に、“本や資料を閲覧するのにも、特権層と一般大衆が分けられる” と述べ、“北朝鮮の大学生は、ケインズやフリードマンを知らない”と語った。

北朝鮮では1967年の金日成の’5.25教示’以後、いわゆる’図書整理事業’を通じて、西洋の文学や哲学などの古典が大部分燃やされたり、墨で塗られたり、ページがやぶられた。それ以降、マルクス関連の書籍もしばらく一般の人は見ることができず、研究者が主に読んでいた。

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‘図書整理事業’の後、1984年からは’平壌外国文出版社’で外国図書が出版され始めた。この時から、西洋の古典文学や哲学などが再び出版されるようになったが、現代経済学や現代思想は党の幹部や一部の特権層が’非公開図書室’だけで閲覧することができる。

キム氏は“北朝鮮で古典は読めるが、現代思想と現代経済理論は読むことができない” と述べ、“国家が選別して承認した外国図書以外は見られない。体制に脅威になると思われる思想と理論は徹底的に排除する”と語った。

キム氏は“90年代後半から、北朝鮮の教育当局は社会主義経済理論と主体哲学の優越性を強調するために、古典経済学と古典哲学は読めるようにした” と述べ、“現代思想や現代の資本主義経済理論は専攻する者に限り、常識だけ教える”と言った。

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また、”90年代に入り、マルクスの’資本論’やエンゲルスの’フォイエルバッハとドイツ古典哲学の終末’、’神聖家族’、レーニンの’国家と革命’などの古典を図書館で借りて読んだが、本がとても古いものなので、紙が全て黄色にあせていた”と語った。

更に、’カーネギー人間関係論’や’シンガポールの繁栄’、’中国共産党の一大悲劇:サンカン戦闘’、’デカメロン’ などの本は、他の人が’非公開図書室’から借りて来たのをこっそりと見たという。

キム氏は“文学作品の場合も、国家が承認したものだけ翻訳して出版するが、それでも体制に脅威にならない限り、沢山翻訳をして出版する” と言い、“大学にいた時、バルザックやプーシキン、ジョン・バイロン、ハイネ、シェークスピア、モリエール、スタンダール、トルストイ、デュマ、ビクトル・ユーゴー、セルバンテスの小説など、多くの本を読んだ”と語った。

一方で、“古典を除いた現代小説はほとんど読んだ記憶がない。北朝鮮は体制に脅威になったり、資本主義に対して幻想を与える可能性がある情報や図書は徹底的に遮断する”と指摘した。

キム氏は“北朝鮮は最新の技術や情報の資料に対する翻訳事業が非常に弱い”と述べ、“大学生が論文を書く時に参考にする外国の資料や情報は全て古いもの”と言った。

キム氏によれば、ひととき平壌の大学生の間で’風と共に去りぬ’(マーガレット・ミッチェル)や’アメリカの悲劇’などのアメリカ小説の熱風が吹いたという。

1994年にアメリカのジミー・カーター元大統領が平壌を訪問し、金日成に’風と共に去りぬ’の映画のフィルムをプレゼントした後、北朝鮮では’風と共に去りぬ’などのアメリカ小説も翻訳出版されたそうだ。

キム・ミョンチョル氏は“こうした本は北朝鮮体制に脅威にならないと考えられ、政府が出版を許可したが、その本を読んだ大学生たちはアメリカについて知るきっかけになり、好まれた”と付け加えた。