美女タレントを「全身ギプス」で連れ去った金正恩氏の拷問部隊

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韓国統一省は2日、今年1月から6月までに韓国に入国した脱北者は546人だったと発表した。前年同期(487人)とほぼ同水準だが、以前と比べるとかなり減っている。

1年間に韓国入りした脱北者の数は2005年(1384人)から増加し、ピークの2009年には2914人に達した。しかし、その後は減少傾向が続き、2012年に金正恩政権が発足してからは年間1000~1500人の水準で推移している。

理由は様々あるが、中朝国境での取り締まり強化が最大のものだろう。2011年12月に金正日総書記が死亡した直後、北朝鮮当局は国境地帯の住民に対し、「特別な理由なく国境付近をうろつく者には躊躇なく銃撃を加える」と警告したという。実際に今年5月末にも、国境の川を越えて脱北しようとした3人が、国境警備隊に射殺される事件が起きた。

北朝鮮において、脱北は必ずしも死刑とされる罪ではない。中国当局に捕まり強制送還されれば、われわれには想像が及ばないほどの虐待が待っている。

(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

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それでも死刑になるわけではなく、虐待に耐え抜くことができれば、刑務所などでの一定期間の服役の後に釈放される。それなのにどうして、脱北の現場においては「即時射殺」を命じているのか。その裏には、「中国に逃げられたら、現地公安にも捕まらず韓国へ行ってしまうかもしれない。絶対にそうならないように、その場で殺せ」という意図がうかがえるのだ。

同じ脱北者でも、出稼ぎなどのために中国へ行っただけの人々と、亡命のため韓国を目指した人々は、強制送還された際の処遇が異なる。韓国を目指した人々は「反逆者」と見なされ、きわめて重い刑罰を受けるのだ。

一方、金正恩氏の「拷問部隊」として知られる国家保衛省は近年、中国に潜伏する脱北者を摘発したり、韓国に逃れた脱北者を強制的に帰国させたりするオペレーションに血道を上げてきた。

(参考記事:手錠をはめた女性の口にボロ布を詰め…金正恩「拷問部隊」の鬼畜行為

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2017年には、韓国で「脱北美女」タレントとして活動していたイム・ジヒョンさんが突然消息を絶ち、後に北朝鮮の対外向けプロパガンダメディア「わが民族同士」に登場したことで、韓国社会に波紋が広がった。

彼女がいかにして北朝鮮に戻ったかは、未だミステリーのままだ。脱北して中国に潜伏していた当時、生き延びるために出演したアダルトビデオチャット映像が流出したことなどを苦に、自主的に帰国したという見方がある一方で、北朝鮮の諜報機関に拉致されたという見方もある。

この件について、李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表は、韓国のタブロイド紙・日曜新聞への寄稿文で、複数の情報筋の証言から彼女が拉致されたことを確認したと述べている。

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イムさんを中国におびき寄せた保衛省の要員たちは、麻酔を使って彼女の意識を失わせ、全身をギプスで固めて動けないようにした上で、第三者の北朝鮮パスポートを持たせ病人のふりをさせて丹東から北朝鮮に入国させたというのだ。

(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

李潤傑氏によれば、イムさんを連れ去った保衛省の目的は、韓国社会で暮らす脱北者たちに恐怖心を植え付けることにあったとされる。そのため、タレント活動でそこそこ知名度のあったイムさんをターゲットにしたわけだ。実際、イムさんの帰国を受けて韓国国内の脱北者の間には恐怖が広がり、北朝鮮は目的を遂げた形となった。

昨年から韓国や米国との対話に乗り出し、「話のわかる指導者」を演じている金正恩氏だが、その権力は徹底的に恐怖に依存している。そして、彼が操る恐怖の究極の形が核兵器なのだ。北朝鮮国内での人権問題に抜本的な改善が見られない限り、北朝鮮の非核化もまた、おぼつかないと言えるだろう。