北朝鮮の最新版「飢えてでも買うべきマストアイテム」

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現在の北朝鮮の若者たちは、「チャンマダン(市場)世代」と呼ばれている。配給制度が完全に崩壊した後の北朝鮮で生まれ育ち、国家や金正恩党委員長のことを「ありがたい」と思わず、社会のことより個人の生活を大切にするのが特徴だ。

表向きは国や金正恩氏に忠誠を誓っているように見えても、その実は面従腹背だ。裏では金正恩氏に無慈悲な批判を浴びせている。

(参考記事:金正恩センスの制服「ダサ過ぎ、人間の価値下げる」と北朝鮮の高校生

そんな若者たちの間の「マストアイテム」について、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

北東部の大都市、清津(チョンジン)の若者たちの間で人気になっているのはスマートフォンと電動自転車だ。それも「食事を抜いてでも買うという話が出る」(情報筋)ほどだ。つらい食糧危機を経験した北朝鮮の人々にとって「食事を抜く」というのは、非常に重い意味を持つ。

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なぜ、そこまでの人気なのか。

最初に挙げられるのは、北朝鮮の人々、特に若者たちの見栄っ張りという特性だ。新しい商品が発売されたら先を争って買い求め、自慢する。かなりの値段であってもどうしても欲しいものなら躊躇せず購入する。「思想よりカネが大切」という拝金主義がまん延しているのに加え、持ち物で階級を判断されるという社会的風潮がある。つまり、良いものを持ってこそそれなりの待遇を受けるということだ。

もう一つの理由は商売と関係しているからだ。

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電動自転車は、競争相手より少しでも速く商品を客に届けて儲けたいと考える若者から注目を集めている。また、スマートフォンは商品の価格情報を調べられるのみならず、送金にも使えるなど、非常に有用だからだ。

電動自転車は中国元で3000元(約4万7000円)から4000元(約6万3000円)で販売されている。コメ1キロが5000北朝鮮ウォン(約65円)で取り引きされているので、コメ900キロ分に相当する。FAOの資料によると、北朝鮮国民1人あたりの年間コメ消費量は59キロ。つまり、15人が1年間食べられるコメの量に匹敵する。

(参考記事:北朝鮮スマホ最新機種は「韓流拡散防止」装置付き

物欲にとらわれ革命精神を忘れた若者は当局にとって好ましい存在とは言えないが、ドラッグに手を出されるよりははるかにマシだろう。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

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ただ、電動自転車やバイクは、当局にとってありがたくない存在だ。ただでさえ不足している電気を消費するからだ。平安南道(ピョンアンナムド)の徳川(トクチョン)市は、免許証なしに電動バイクに乗ることを禁じている。免許証を取ろうにも中々出してくれず、ワイロを要求される始末だ。

(参考記事:北朝鮮が「環境に優しい電動バイク」を規制する切実な理由

清津では、韓国製の様々な生活用品も人気を集めている。例えば、冷蔵庫、炊飯器、テレビなどの家電はもちろん、調味料に至るまで様々な商品があるが、ご禁制の品だけあって、市場でおおっぴらに売るのではなく、家で販売している。

韓国製品は、「ここ(清津)で買えば中国や韓国に買いに行くよりも高くつくが、ずっと安全」(情報筋)と考える人が多いようだ。買うにはカネとコネが必要であっても、運び込む途中で取り締まりに遭うリスクが低いということだ。

しかし、いくら高価な電化製品を取り寄せても、劣悪極まりない北朝鮮の電力事情がネックとなる。

「電気が供給される日なら炊飯器を使えるが、そうでない場合は棚に飾って装飾品として使う」(情報筋)

こういう「単なる高価な箱」を飾り立てるところにも、北朝鮮の人々の見栄っ張りな面が現れていると言えよう。北朝鮮では一般家庭でも発電用のソーラーパネルが普及していて、韓国製の電化製品を買うほどの財力があれば、ソーラーパネルの何枚かは家に設置する余裕があるだろう。しかし、照明やテレビ用には使えても、炊飯器や冷蔵庫を使うには役不足だ。

(参考記事:北朝鮮で普及進むソーラーパネル…改善しない電力事情が背景

電動自転車の充電は、自宅でやるのではなく工場でカネを払って行う。電気が優先供給されているため、工場は余った電気を販売して儲けているというわけだ。