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北朝鮮では、医薬品は市場で買うのが普通だ。これは絆創膏や湿布、風邪薬の類に限った話ではない。慢性疾患の治療薬から点滴や包帯に至るまで、ありとあらゆる医薬品は市場で買うのが当たり前になっているのである。

同国ではかつて、すべての医療が無料で受けられることになっていたが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」に前後して医療システムが崩壊。病院に行っても薬はなく、市場で購入して医者にワイロとともに渡すか、人民病院の医者が自宅で開業している診療所に行くしか方法がない。

(参考記事:脱北者が北朝鮮の医療崩壊の現実を告発「患者の命もカネ次第」

当局なそんな状況にメスを入れようとしているが、長期間に渡って溜まった膿が吹き出して止まらないような状況となっている。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、新義州(シニジュ)の市場で医薬品の販売に対する取り締まりが始まったと伝えた。衛生検査をする係官と保安員が合同で市場を周り、原則として許可された薬局以外では薬を販売してならないと警告を発している。

医薬品は、内閣保健省の中央医薬品管理所から各自治体の医薬品管理所を経て病院、診療所、薬局に供給されるようになっている。北朝鮮の医薬品管理法38条は、医薬品は決められた薬局または医薬品売台でのみ販売できると定めている。また、購入にあたっては中央保健指導機関が定めた一般販売指標、または治療予防機関が出した処方箋が必要だ。

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医療システムの崩壊で、医薬品は市場で買うような状況となったが、金正恩党委員長が強調している「正常国家化」の一環として、医薬品の個人による販売を取り締まろうとしているのではないかとの見方がある。

崩壊した従来の国家主導の医療システムを再構築するために、個人間の医薬品の取り引きを取り締まり、国の手に主導権を戻そうというものだ。先日、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)では、医薬品の卸売商が摘発され、商品が全量没収されたが、今回の新義州での医薬品の個人販売に対する取り締まりと同じ理由によるものと考えることも可能だ。

また、薬剤師を経ずに医薬品を手に入れ、服用することで健康上の問題が生じることへの対策とも言えよう。

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韓国の統一研究院の「2018北朝鮮人権白書」は「(北朝鮮で)医薬品の専門的な知識を持たない一般人が医薬品を販売しているため、一般住民の健康に致命的な悪影響を与える可能性がある」と指摘、「特に住民の間違った医療知識に基づき、覚せい剤などの麻薬類を治療用に使用する様相が現れている」としている。

医薬品不足は、医師が小麦粉を材料にして製造するほどの深刻さだ。また、代用品として覚せい剤を使うことも一般化していると言われている。

こうした一連の取り締まりに対して、庶民からは「薬が買えない」との悲鳴が上がっているという。

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「国は医薬品をまともに供給できないくせして、取り締まりばかりしている。病院には薬がないので、購入して医者にワイロとともに渡さなければ治療をしてもらえない状況なのに、取り締まりをすれば薬を買う方法がなくなる」(情報筋)

また、市場で医薬品を売っていた商人たちはなぜ急に取り締まりが行われるのかわからず首を傾げている状況だという。

「病院がまともに機能していないので、薬を買い求められず市場や個人宅で購入しているというのに、落ち度がないのに取り締まられた人々は悔しい思いをしている」(情報筋)

ただ、取り締まりが全国的に行われているかどうかは、今のところわかっていない。平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は医薬品販売の取り締まりについて「聞いたことがない」と述べている。