治安悪化の北朝鮮、警察幹部も「ドロボー」に沈黙

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1980年代以前の北朝鮮は、非常に犯罪の少ない国だったと言われている。勤め先でもらえる月給が少ない代わりに、住宅から食料品に至るまでほとんどのものを国が無料、または安価に配給し、「貧しくとも生きていける皆が平等」な国だったからだ。もちろん、特権層は存在したのだが。

ところが、1990年代後半の未曾有の食糧危機「苦難の行軍」に前後して配給システムが崩壊し、餓死者が続出した。生きるために市場で商売する者もいれば、犯罪に走る者もいた。極度に悪化した治安対策として金正日総書記は「犯罪者はその場で処刑せよ」という荒っぽいやり方を指示した。

それから20年。一時は落ち着きを取り戻していた北朝鮮の経済が、国際社会の制裁により深刻なダメージを受ける中、各地で犯罪が多発していると言われている。

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北部山間地の両江道(リャンガンド)デイリーNK内部情報筋は、分駐所長、つまり派出所長の家が空き巣の被害にあったと伝えた。

事件が起きたのは今月初めのことだ。道内の三水(サムス)郡のある村の分駐所長は、家族総出で親戚の家に向かった。夜遅くになって帰宅したところ、家の中は激しく荒らされ、テレビやノートパソコンなどの金目の物がすべてなくなっていた。

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一切の証拠を残さず犯行現場を立ち去るなどの点を考えると、窃盗の常習犯による仕業である可能性が高い。村人は、分駐所長の家に空き巣に入る犯人の大胆さに舌を巻いているという。

分駐所長は、地域の治安、動向の監視に加え、地域住民に防犯対策を説く役割を担っている。それを身をもって実践するためか、自宅には何重にも鍵をかけるなどの防犯対策を行っていた。それなのに、あっけなく空き巣にやられたとなっては、面目丸つぶれだ。

所長は、空き巣被害の話が外部に広がらないように腐心したが、口コミネットワークに乗ってあっという間に広がってしまった。

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彼が、話をおおっぴらにできない理由は他にもある。

「分駐所長なら外貨も相当な額を持っているはずだ。所長は被害があっても誰にも言えず、一人で気を揉んでいることだろう」(情報筋)

一般的な保安員(警察官)の月給は3000北朝鮮ウォン(約39円)。平均的な4人家族の1ヶ月の生活費が50万北朝鮮ウォン(約6500円)であることを考えると、月給だけでは生きていけないが、優先的に食糧が配給されていたため、それなりに暮らせていた。

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ところが、配給が正常に行われなくなってしまった。生きていくためには、権限を振りかざして村人からワイロを巻き上げるしかない。そうして相当の額の外貨を貯め込んでいたようだが、カネのあることを上部に知られると制裁を受ける可能性があり、被害を訴えでるわけにもいかないのだ。

保安署では捜査に乗り出し、地域の事情に詳しくない者の可能性が高いと見ているが、犯人の目星すらついていない。