「結婚式ビデオ共有したら家族全員を処罰」金正恩が新たな無茶ぶり

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北朝鮮で利用されている携帯電話の数は、500万台とも600万台とも言われる。地域や階層による偏差はあるだろうが、概ね「一家に1台」普及していると言っても過言ではないだろう。

携帯電話に装備されているカメラを使って、映像、画像を撮ることも広く行われている。つまりは一種のホームビデオだが、当局はこれを取り締まる方針を示したと、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。背景には、様々な映像に対して抱く当局の恐怖心がある。

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ある企業所では先週、初級党書記(企業所に設けられた朝鮮労働党の委員会のトップ)が、「住民の間での自分式の映像を制作して流布する現象に厳重に対処する」というテーマで講演を行った。

中央党(朝鮮労働党中央委員会)の指示で行われた今回の講演だが、結婚式やピクニックでグループで歌ったり踊ったりしている映像を共有する現象が増加していると指摘、このような行為が「遊び人風」を拡散させ、朝鮮式社会主義の高尚な思想文化を堕落させると批判した。

違反者は当事者のみならず家族全員が処罰されるとし、違反者の実例として、結婚式の参加者が歌い踊る様子を撮影、編集して配布し、処罰された大学生を挙げた。「腐りきった資本主義の文化で、わが国の精神文化を侵食する重大な犯罪を犯した」というのが摘発理由だ。

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講演は、自分のパソコンや携帯電話をチェックして、そのような動画があれば即時削除するか、通報せよという警告で締めくくられた。

講演を聞いた人々は、納得できないという反応を示したと情報筋は伝えた。

北朝鮮では、結婚式などの家族のイベントを撮影することが当たり前になっている。映像を編集してUSBメモリやSDカードに入れて携帯電話で再生する。映像を編集する業者も存在する。

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韓国SBSが2011年に公開した、北朝鮮の結婚式の様子を撮影した動画は、字幕が付けられ、BGMが挿入されるなど、業者が撮影、編集したものと思われる。

娯楽の少ない北朝鮮でのささやかな楽しみであるホームビデオに当局がいちゃもんをつけたことに、住民が納得できないのは当然のことだろう。

当局がこのような無茶な規制を試みるのも、映像の力を恐れているからこそだろう。

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例えば、韓流ドラマ、映画、バラエティは、北朝鮮の人々の考えやライフスタイルに影響を及ぼすにとどまらず、間接的に脱北を煽り、北朝鮮の体制を脅かしかねない。当局はその恐ろしさを知り、取り締まりに躍起になっているが、根絶は難しいのが現状だ。

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映像が伝えるのは、娯楽やライフスタイルだけにとどまらない。

韓国のNGO・脱北者同志会の徐宰平(ソ・ジェピョン)事務局長はデイリーNKのインタビューに、「10年前にアラブで民主化の熱気が拡散したとき、ITデバイスが革命の原動力になったことを北朝鮮の保安機関はよく知っている。それで携帯電話で個人間でデータのやり取りをすることを原則として禁止している」と指摘した。

中国では胡錦濤政権時代に各地でデモや抗議活動などが頻発したが、それを全国に知らせたのは、携帯電話で撮影した映像、画像だった。

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