北朝鮮製カツラの裏に隠された「少女搾取」ともうひとつの秘密

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中朝国境の街である遼寧省丹東市で、北朝鮮が「ツケマツゲ」や「カツラ」などで外貨稼ぎをしていると今月6日の朝日新聞が報じた。これらの手工品は制裁対象ではないため、単価が安くても北朝鮮が頼らざるをえず、輸出額も前年比の2倍に伸びているという。しかし、こうした手工品の製造過程で、深刻な人権侵害が行われている疑惑がある。

少女たちの「やわらかい皮膚」

北朝鮮の外貨稼ぎ会社が中国企業からの発注によってツケマツゲやカツラ、そして衣類や造花などを製造していることは、本欄でも昨年の時点で報じていた。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、この会社の材料の調達先が、まさしく朝日新聞が報じた丹東市だ。

衣類の材料である生地は国営のアパレル工場に納入されるが、造花やツケマツゲの材料は学校が密集する地域に運ばれる。その理由は、10代の学生たちを労働力としているからだ。働き口のない10代の少女たちが、成人の半分ほどの賃金でツケマツゲの製造現場で働かされているという。

これも以前に報じたが、主要な外貨稼ぎ機関のひとつである大聖総局傘下の貿易会社は、10代の少女たちの「やわらかい皮膚」に目を付け、平壌や平城(ピョンソン)、清津(チョンジン)、咸興(ハムン)、新義州(シニジュ)など主要都市の宝石加工所あちこちで盛んに雇い入れ、朝から晩まで黙々と働かせている。

(参考記事:北朝鮮企業が少女たちの「やわらかい皮膚」に目をつけた理由

念のため言っておくが、北朝鮮の労働法では16歳未満の労働は禁じられている。それにもかかわらずこうした現象が見られるのは、国家主導の計画経済が破たんし、なし崩し的に資本主義化が進む中、都市と地方間の格差、所得格差の拡大が進行しているからだ。貧困層の、とくに女性たちの窮状は甚だしく、少なくない人々が売春に走り身を亡ぼす。

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さらに、北朝鮮産のカツラとツケマツゲは、政治犯収容所でも製造されている疑惑がある。

政治犯収容所をはじめとする北朝鮮の拘禁施設は強制労働や拷問の横行、劣悪な環境に対し、国際社会の激しい批判を浴びている。とりわけ、女性虐待が日常化している実態は、元収容者や関係者の告発により明らかになっている。

2016年に米国の人権団体「北朝鮮人権委員会」(HRNK)が発表したレポートによると、中朝国境地域の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の全巨里(チョンゴリ)教化所では、2009年にカツラを製造する作業グループが作られ、収容された女性らが、午前5時から午後9時まで働かされていた。睡眠時間は2時間から4時間しかなく、そうして作られた製品は海外に輸出されていた。

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韓国の「北朝鮮人権情報センター」は2011年の時点で、拘禁施設で「輸出班」という部署がつくられ、ここで生産される「ブラジャー」「カーテン」「レース」「セーター」はロシア、中国、日本などに輸出されていると指摘。全巨里教化所では、ツケマツゲとカツラを生産する班が新設されたと明らかにしている。