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民族の聖地である白頭山(ペクトゥサン)と、金日成主席がかつて抗日パルチザン活動を行っていた革命の聖地でもある、北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)三池淵(サムジヨン)。

金正恩党委員長は、この地に現代的なモデル都市を建設する計画に力を入れ、現地視察を繰り返している。

金正恩氏は先月、三池淵を訪れたときにこのように発言している。

「三池淵郡整備はわれわれの前途を阻もうとする敵対勢力との激しい階級闘争、政治闘争だ。三池淵郡建設での勝利の砲声はわが国家の威力、経済的潜在力の誇示になると再び強調し、建設者だけでなく全党、全国を呼び起こして党創立75周年まで三池淵郡の建設を締めくくって、革命の生家の庭である三池淵郡を現代文明が凝縮された山間都市、他人が真似ることさえできない特色ある郡、わが国で最も豊かに暮らす郡に整えなければならない」

(参考記事:金正恩氏が三池淵を視察…昨年10月以来

この「わが国で最も豊かに暮らす郡」の実現のために、北朝鮮当局は現在建設中の住宅に入居する人々に、冷蔵庫を無料で配布する方針だと、デイリーNK内部情報筋が伝えた。

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「冷蔵庫1万台を確保せよとの課題が下された」(中国駐在の北朝鮮の貿易関係者)

冷蔵庫は国内で確保するのではなく、全量を中国から輸入する模様だ。しかし、貿易会社は正規の輸入に加え、密輸まで行っている。つまり、中国の税関が冷蔵庫の大量の輸出を認めていないということだ。

貿易会社の関係者は、夜陰に乗じて国境を流れる川を渡って、子どもの背丈ほどの高さの冷蔵庫を数十台運び込み、恵山(ヘサン)駅から三池淵に向かう貨物列車に載せ替える作業を繰り返している。

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ところが、中国当局はここ最近、密輸に対して5Gネットワークを使っての厳しい取り締まりを行っており、計画が順調に行くかは未知数だ。

また、北朝鮮の電力事情もネックになるだろう。当局は「首都・平壌と同等の食料と電気の配給を保証する」との宣伝しているとのことだが、北朝鮮の電力生産は、施設の老朽化により発電設備能力の半分にも満たない状況で、各地で停電が相次いでいる。

住民は、ソーラーパネルを使って停電に対処しているが、消費電力の多い冷蔵庫を動かすのは無理だ。つまり、冷蔵庫が単なる「大きな箱」と化する可能性が充分にあるということだ。

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それでも、貧しい地域住民の間では期待が高まっている。新築の家に加えて、交通死亡事故の賠償として被害者遺族に渡されるほど高価な冷蔵庫がタダでもらえるからだ。

(参考記事:北朝鮮の国民1人の「命の値段」は冷蔵庫と同じ…もみ消される死亡事故

北朝鮮は、指導者の名前で国民に贈り物を贈って支持をつなぎとめるという「贈り物政治」を繰り返してきたが、久々の大盤振る舞いに「三池淵郡は希望郡だ」(住民)との声が上がっているという。

一方で、経済的に余裕のある人は、移住を考えていない模様だ。金正恩氏の肝いりプロジェクトだけあって、入居後は様々な政治イベントに動員され、商売に支障が出るからだろう。また、三池淵は冬は氷点下40度以下になる極寒の地で、交通も便利とはいい難い。

(参考記事:大成功か大失敗か、金正恩氏の肝いり「最北の観光地の」の運命は…