「食べるため」牛泥棒も…北朝鮮、経済制裁で困窮深まる

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経済制裁下の北朝鮮で、困窮した労働者が工場の設備や資材を盗んで売り払い、社会問題になっている。

朝鮮労働党平安南道委員会の会議室で幹部を対象にして行われた講演会で、道の保安局長(県警本部長に相当)が价川、徳川(トクチョン)、北倉(プクチャン)などの工場で窃盗が増加しているとして注意喚起を行った。窃盗の被害に遭っているのは、溶接棒などの設備や、銅線、動線、鉄筋、アルミ、電気ケーブル、珪素鋼板、セメント、木材など資材だ。

1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の時代には、こうした事件が頻発した。当局は公開処刑などの極刑で抑え込みを図ったが、それでも盗難の続発は収まらなかった。

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庶民からすれば、飢えて死ぬのも処刑されるのも一緒、との考えだったのだろう。生き延びるため、手段を選ぶ余裕などなかったのだ。

一方、北部の両江道(リャンガンド)では、郊外の牧場から家畜が盗まれる被害が発生した。2人から5人の盗賊団が、国営牧場や個人宅を襲い、家畜を盗んでいる。それも市場で売り払うのが目的ではなく、食べるのが目的だという。

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家畜泥棒もまた、「苦難の行軍」の時代には頻発したが、最近はほとんど聞かなくなっていた。北朝鮮の食糧事情はかつてと比べ改善しているとは言え、その日の糧を得るのに女性が売春に走らなければならないような現実もいまだ無くなっていない。

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そうした貧困層は、わずかな社会・経済的な変動からも大きな影響を受ける。

現地の情報筋は、中国人が投資・運営している店を狙った窃盗も相次いでいるとして、治安悪化の深刻さも伝えた。

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「苦難の行軍」の時代には、当局が軍隊を出動させ、抗議を行っていた労働者たちを文字通り蹂躙する出来事もあった。それこそ、金正恩党委員長が最も恐れている事態だろう。

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ただ、当時と同じような行動に出れば、米朝対話も南北対話も吹き飛びかねない。金正恩氏は果たしてどのようにして、国民の困窮や不満と向き合うつもりなのだろうか。