「たわごとを言うな」金正恩氏が文在寅氏の誘いを無視した理由

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北朝鮮の金正恩党委員長と韓国の文在寅大統領が初の南北首脳会談を行い、「板門店(パンムンジョム)宣言」に署名してから27日で1年が過ぎた。両首脳は当時、「完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現し、民族全体が繁栄と幸福を享受する新しい時代を切り開く」と高らかに宣言した。

しかし、現在の実情はお寒い限りだ。韓国からの1周年記念行事を共同で行おうとの呼びかけに、北朝鮮は無回答を通した。それどころか、文在寅政権に対する北朝鮮の態度は冷たさと辛らつさを増してきている。

北朝鮮が韓国に対して冷たくなったのは、ベトナム・ハノイでの2回目の米朝首脳会談が決裂し、その後の外交戦略の練り直しのために余裕がないため――では決してない。現に、金正恩氏は文在寅政権からの共同行事の誘いを捨てて、その間にロシアのプーチン大統領に会いに行っているのだ。

文在寅氏とて、金正恩氏と付き合うために相当なリスクを冒しているのだが、これではメンツ丸つぶれである。

(参考記事:金正恩氏「違反ベンツ」での記念写真を公開された文在寅氏の泣き所

北朝鮮の狙いは何か。ひとつには、韓国をして米国の制止を振り切って南北経済協力に走らせ、経済制裁下の苦境を少しでも緩和しようとの思惑があるはずだ。

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さらにはこの際、米韓の離間を図っておきたいところだろう。すでに米韓は、対北朝鮮で相当に足並みが乱れている。

もちろん、韓国内にもこうした「被害」を最小限に抑えようと努力する人々がいる。例えば米韓両軍は、従来の合同軍事演習の規模を縮小したり、構成を変更したりしながら、同盟維持のために必要な訓練の維持を図ってきた。

北朝鮮は、これに対して抜け目なく攻撃をしかけている。たとえば、対韓国窓口機関の祖国平和統一委員会は、25日に発表した報道官談話で、「(韓国は)朝鮮半島の情勢を考慮して訓練の規模を縮小したとけん伝しているが、そのような常套的なたわごとでわれわれを安心させ、内外世論の非難を避けていこうとするなら、実に愚かな誤算である」と主張。米韓の合同演習が続けば、南北関係を「取り返しのつかない危険に陥れかねない」と脅して見せた。

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韓国側も、北朝鮮からこのように言われたからと、「はい、そうですか」と合同演習を全面中止にするわけには行かない。それは、北朝鮮にとっても想定内だろう。

だが、このような主張を続けていれば、文在寅政権に対して心理的な「貸し」を作れるかもしれない。また、文在寅政権の支持勢力の中にいる反米的な思考を持つ人々にダイレクトに影響を与え、「わが国の政治はダメだ。自主を貫く北の方がマシだ」との雰囲気を醸成できるかもしれない。

つまり、北朝鮮は決して韓国を無視しているわけではないのだ。むしろ、韓国を最大の攻略対象としている可能性すらあるのだ。外交でも内政でも良いところのない文在寅政権は、果たしてこの攻勢に抗うことができるのだろうか。