金正恩氏が自分の「ヘンな写真」をバンバン公開する理由が判明した

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金正日総書記が2011年12月に死亡し、息子の金正恩氏が後継者となって以降、北朝鮮で最も大きな変化が起きたのは、おそらくはメディア戦略である。

たとえば2014年5月15日、北朝鮮の首都・平壌で、約500人が犠牲になったとされるマンション崩壊事故が起きた。北朝鮮では「速度戦」の名の下に、無理な工期のごり押しによる手抜き工事が横行。この手の事故が数多く起きている。

(参考記事:【再現ルポ】北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

そういった事例の中においても、このマンション崩壊の現場はとくに凄惨なものと言われる。遺体の収容作業すら行われないままガレキの撤去が行われ、ちぎれた手足があちこちに転がっていたとされる。

それほどの惨事が起きようとも、以前の北朝鮮当局ならば、徹底的に隠ぺいを図っただろう。ところが金正恩氏は、犠牲者の遺族を集めた場で建設工事の責任者である当局幹部に頭を下げさせ、その写真を労働新聞に掲載させたのだ。

(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

北朝鮮で権力の側が国民に謝罪するなど、以前なら考えられなかったことだ。しかも、その証拠写真を公式メディアに掲載するとは、まさに衝撃的な出来事だった。

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また、金正日時代まで、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)はなかなかその全容をうかがわせない、謎に満ちた存在だった。ところが金正恩時代になって以降、北朝鮮メディアは最新兵器の写真を次々に掲載。弾道ミサイルの発射シーンも惜しげなく公開した。一時は朝鮮労働党機関紙の労働新聞が、まるでミリタリーマガジンのようになってしまったほどだ。

さらにビビッドな変化が見えるのは、公式メディアにおける金正恩氏の写真の使われ方だ。「これいいの!?」という具合に、こちらが心配になってしまうような写真が多用されているのだ。

中には、金正日時代ならば明らかに「銃殺モノ」の写真も含まれている。

(参考記事:金正恩氏が自分の“ヘンな写真”をせっせと公開するのはナゼなのか

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金正恩氏がどうして自分の「ヘンな写真」を次から次へと公開するのか、筆者にとって長らく謎のままだったのだが、最近になって、その理由が判明した。

金正恩氏は、今月の6、7日に開かれた朝鮮労働党の第2回党初級宣伝活動家大会に、「斬新な宣伝・鼓舞によって革命の前進原動力を倍加していこう」というタイトルの書簡を送っている。ちなみに初級宣伝活動家とは、行政機関や工場など末端の職場単位で置かれた党組織で、思想教育やプロパガンダを担当する人々だ。

金正恩氏はこの書簡に、次のように書いている。

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「偉大性教育で重要なのは、首領は人民とかけ離れた存在ではなく、人民と生死苦楽をともにし、人民の幸福のために献身する、人民の領導者であるということを、深く認識させることです。もし、偉大性を強調するために、首領の革命活動と風貌を神秘化するならば、真実を隠してしまうことになります」

これは、父である金正日氏に対する「強烈な皮肉」だ。金正日氏は、自らの父(正恩氏には祖父)である故金日成主席の神格化を主導し、体制の基盤を固めた。また、自分自身は容易に外部に姿をさらさず、謎めいた雰囲気を身にまとい続けていた。金正恩氏が否定した「神秘化された首領」とは、金正日氏に他ならないのだ。

金正恩氏は、父の「異常な女性遍歴」に強い違和感を持っていたとの説がある。その違和感はもしかしたら、父の統治スタイルに対する反感にも転じていたのかもしれない。

(参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

つまり金正恩氏は、自らの素顔を開けっ広げにさらすことで、最高指導者の神秘性を否定し、そのうえで国家において父を超える存在となるべく、彼なりに描き出した権力の階段を上って来たのではないだろうか。