金正恩氏の「親密美女」が異例の出世…中央省庁の次官級に

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北朝鮮の金正恩党委員長は、先月7日から10日にかけて中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。訪中真っ只中の8日は金正恩氏の誕生日だった。習氏が呼びつけたのか、それとも金正恩氏が誕生日を祝うことを返上して訪中を望んだのかについてはわからないが、中朝関係は以前に比べると着実に改善している。

訪中後、金正恩氏は友好芸術団を中国に派遣した。友好芸術団は同月26~27日に北京の国家大劇院で公演を行い、習氏が彭麗媛夫人と鑑賞した。友好芸術団の団長は玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏だ。北朝鮮を代表するポップグループ・ポチョンボ電子楽団の看板歌手だった女性である。その後は、金正恩氏がポチョンボ電子楽団の後継として創設したモランボン楽団の団長を務めた。一時期、金正恩氏の元カノともいわれたこともあったが、単なる噂であり、金正日氏の愛人だったという説が有力だ。

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玄氏は昨年2月、韓国の平昌冬季五輪に派遣された三池淵(サムジヨン)管弦楽団の団長も務めたが、今回の中国公演を通じてさらに出世していることが明らかになった。

北朝鮮の朝鮮中央テレビが友好芸術団の訪中を報じ、「朝鮮労働党中央委員会副部長たちである、チャン・リョンシク同志、玄松月同志をはじめとする朝鮮民主主義人民共和国親善芸術代表団の主要メンバーたちが習近平同志と彭麗媛女史を迎えた」と伝えたのだ。

朝鮮労働党の副部長は、日本の中央省庁の次官級に相当する。玄氏は一昨年に朝鮮労働党中央委員会候補委員に抜擢されている。歌手が党中央委員会のメンバーになるのも史上初だが、副部長職だとするなら異例中の異例だ。単に芸術家として優れているだけでなく、金正恩氏とプライベート面でもかなり親しい関係にあったからこそ党の候補委員、さらに副部長に抜擢されたと見るべきだ。そもそも金正恩氏の妻である李雪主(リ・ソルチュ)氏は銀河水管弦楽団の歌手だ。楽団は違うが二人とも看板歌手だった。

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米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、玄氏は北京駐在の北朝鮮外交官の間で「小さな王」と呼ばれていたという。それほど存在感を示しているということだろう。玄氏が労働党のどの部署に所属するかは明らかにされていないが、韓国の聯合ニュースは、「朝鮮労働党宣伝扇動部所属」ではないかと見ており、筆者もその可能性が高いと思う。宣伝扇動部とは、文芸作品を通じた最高指導者の偶像化や体制の宣伝、そして住民に対する思想教育を担当する。

玄氏は元歌手だけに「喜び組」出身とされることがあるが、この表現は正確ではない。本来、喜び組とは最高指導者の身辺補佐をする女性たちの総称だ。喜び組の女性たちは、マッサージ、スポーツ、公演などの専門分野に別れており、夜の奉仕をする特別な組織も存在するとも言われている。

玄松月氏は、もはや金正恩氏の最側近の一人と言っても過言ではない。玄氏や金正恩氏の夫人の座を射止めた李雪主氏のように芸術家として金正恩氏の寵愛を受ける女性がいる一方で、言葉どおり地獄を見た芸術家たちもいる。2015年3月には、銀河水管弦楽団の複数のメンバーが、裸で立たされた上で、遺体が原形をとどめなくなるまで機関銃で乱射されるという実に残忍な方法で処刑された。

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李雪主氏が所属していたにもかかわらず、楽団員は処刑され解散の憂き目にあった銀河水管弦楽団。しかし、今回の中国公演で、同楽団に所属していた歌手が復権したという。