金正恩が最も恐れる「パンク青年」の影

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東京新聞は25日、北朝鮮当局が今年8月に青年層への教育と統制を強化する指示を全国的に下していたと、内部文書を引用して報じた。この文書で取り締まり対象として挙げられているのは、「傀儡映画などの不順出版宣伝物」や「異色な踊りや歌」などだ。つまり韓流ドラマ、映画、バラエティ、K-POPのことを指す。

(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

北朝鮮では今年に入ってから、一連の非社会主義的現象(当局が考える風紀を乱す行為)の取り締まりが行われ、春には韓流ドラマを見ていた若者が少年院送りの処分を受けているが、若者への締め付けは強まる一方だ。そこからは幹部の子弟とて逃れられない。

平安南道(ピョンアンナムド)デイリーNK内部情報筋によると、平城(ピョンソン)市の中徳(チュンドク)高級中学校3年生(高3に該当)の生徒5人が韓流ドラマを見ていたところを踏み込まれ、保衛部(秘密警察)に連行された。

その後、5人の中に平城市人民委員会(市役所)の幹部の子弟が含まれていることが判明した。当初、保衛部は事件をもみ消そうとした。幹部の子弟に手荒な真似をすると、どのような仕返しに遭うかわからないからだ。しかし、上部から「厳しく取り締まれ」との指示が下されたため、通常通り取り調べを進めているとのことだ。

この件について情報筋は「南北の和解ムードがあふれる時期だからこそ、あえて強く処罰している可能性が高い。上部の指示もあったので保衛部は幹部の子どもに対して罰を下すだろう」としている。この情報筋は東京新聞が報じた指示については認識していないもようだが、若者に対する締め付けの強化を肌で感じ取ったようだ。

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「チャンマダン(市場)世代」と呼ばれる若者は、北朝鮮当局が最も恐れる存在だ。

日々の食糧から住宅に至るまで、ほぼすべてのものを国から配給で受け取り、国や指導者をありがたく思っていた上の世代とは異なり、配給制度の崩壊後に育った若者は、国や指導者、社会に対して無関心で、自分の暮らしを優先させる。

また、スマホなどのデジタルデバイスの扱いに慣れており、韓流などの外国発の文化コンテンツを流通させるなど、当局にとって非常に頭の痛い存在だ。

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若者たちは、統制強化と重罰化でしばらくはおとなしくしているだろうが、ほとぼりが冷めれば取り締まりが骨抜きにされるのが北朝鮮の常だ。彼らが「不順出版宣伝物」や「異色な踊りや歌」を捨て去り、社会主義の偉大な理想に燃えることなどありえないのだ。

上述の指示文には、中国との国境に面した慈江道(チャガンド)中江(チュンガン)郡で「おんどりのような頭で出歩く」青年の話が出てくる。記事はモヒカンのことを指すのでないかとしているが、これを持って「北朝鮮にもついにパンクスが登場した」と考えるのは早計だろうか。