「公開処刑」「虐待労働」衛星写真が暴く北朝鮮の秘密

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米国のNGOである北朝鮮人権委員会(HRNK)は8月30日、咸鏡北道(ハムギョンナムド)の清津(チョンジン)にある25号管理所の収監者たちが強制労働させられる様子を撮った衛星写真を公開した(上)。北朝鮮の人権侵害の様子が、衛星写真に捕捉されたのはこれが初めてではない。HRNKは過去、公開処刑の様子を捉えた証拠写真も公開している。

(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

管理所とは、北朝鮮における政治犯収容所の正式名称である。今月17日、国連総会が14年連続で採択した、北朝鮮の人権侵害に対する非難決議は、政治犯収容所の閉鎖と全ての政治犯の釈放を要求している。

国連の北朝鮮人権調査委員会(COI)が2014年2月に発表した最終報告書によれば、北朝鮮には4ヶ所の政治犯収容所がある。また、教化所(刑務所)に転用されたとの説がある施設がもうひとつあり、8万人から12万人の政治犯が収容されていると見られている。

政治犯収容所に警備隊員として勤務し、その恐怖の実態を告発し続けている脱北者・安明哲氏によれば、「そこでは人間が想像しうる、ありとあらゆる残酷なことが行われていた」という。まさに、実在する「地獄の一丁目」である。

政治犯収容所の写真自体は、これまでにも数多く撮影されているが、HRNKが公開した写真では初めて、収監者や警備隊員と見られる人影が確認された。写真に付けられたキャプションは左上から時計回りに、◆収容所の監視塔◆収監者と警備隊員と推定。穀物の収穫の様子◆2017年11月6日撮影◆収容所の塀◆荷車と推定◆荷車と推定――となっている。

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一方、韓国・ソウルに本部を置く「転換期正義ワーキンググループ(Transitional Justice Working Group=TJWG)」は、北朝鮮国内で銃殺が行われた場所、死亡者の遺体が集団埋葬された推定地、遺体の火葬場所などを示したマップの制作を進めている。TJWGはこれまで、数百人の脱北者との対面調査を行い、そこで得たデータを情報技術(IT)を駆使した手法で解析し、場所を推定。その場所を地図上の座標に落とし込む作業を続けてきた。

作業はまだ続いているが、昨年7月に中間総括として発表された報告書によると、銃殺や火あぶりなどの刑が行われた場所、集団埋葬の推定場所など計393カ所を把握したという。

政治犯収容所には以前、有期刑の囚人を収容する「革命化区域」と、無期刑の囚人が入れられる「完全統制区域」が存在していた。そのため、革命化区域から釈放され、脱北した人々の証言により収容所の実態が外部に知られることになった。

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ところが金正恩党委員長の時代になり、北朝鮮は革命化区域をなくし、収容所すべてを完全統制区域にしてしまった。これにより、収容所の実態把握が困難になっている。

現時点では、HRNKやTJWGなどの取り組みだけでは、北朝鮮の隠ぺい工作に対して有効とは言えないかも知れない。やはりこの問題を掘り下げるには、国家レベルでの情報収集が必要だ。

人権問題は、間違いなく北朝鮮のアキレス腱である。また、人権問題の改善と民主化なくして、北朝鮮の本当の非核化はあり得ない。要は北東アジアの安全保障に関わる問題なのであり、そういった視点から、相応の予算を投じた情報収集に、いずれかの国が動き出すことが待望されている。