金正恩氏、やっと復権した側近を「すぐにまた粛清」か

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昨年から今年にかけて軍や国務委員会の職位から解かれて失脚し、その後に復権が確認されていた金正恩党委員長の側近に、またもや粛清説が出ている。北朝鮮の幹部が失脚と復権を繰り返すのは珍しくない。

(参考記事:側近「激ヤセ写真」に見る金正恩式「再教育」の恐怖

ただ、今回はその間隔が異常に短い上に、韓国メディアが伝えた情報には「家族とともに政治犯収容所に送られた」とするものもあり、真偽が気になるところだ。

(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

その側近とは、朝鮮労働党中央委員会の黄炳瑞(ファン・ビョンソ)第1副部長だ。黄炳瑞氏は昨年まで、朝鮮人民軍トップの総政治局長の座にあり、一時は金正恩氏に次ぐ「ナンバー2」とも言われた人物だ。

しかし昨年10月、公式の場から姿を消した。11月には韓国の情報機関・国家情報院が国会情報委員会に対し、「党に対する不純な態度を問われ処罰されたもよう」と報告した。

ところが今年2月16日、北朝鮮メディアが報じた写真にその姿が確認され、6月には金正恩氏の中朝国境地帯の視察に同行。朝鮮中央通信などは黄炳瑞氏の肩書を「朝鮮労働党中央委員会の幹部」と伝えた。さらに8月13日、金正恩氏の平安南道(ピョンアンナムド)視察に同行したことが報道され際には、肩書は日本の中央省庁の次官に匹敵する「党中央委員会第1副部長」となっていた。

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ところがこれから間もなく、黄炳瑞氏はまたもや公式の場から姿を消す。北朝鮮メディアに登場したのは、8月21日付の報道で金正恩氏の妙香山(ミョヒャンサン)医療器具工場視察に同行したことが伝えられたのが最後だ。

その後、北朝鮮は9月9日に建国70周年を迎え、同月には文在寅韓国大統領の平壌訪問もあった。ほかにもキューバのミゲル・ディアスカネル国家評議会議長を筆頭に、重要な賓客の訪問も続いた。そのいずれの報道にも党第1副部長の黄炳瑞氏が登場していないのは、やはり不自然と言える。

これについて韓国のニュースサイト、リバティ・コリア・ポスト(LKP)は、金正恩氏が妙香山医療器具工場を視察した際に激怒したことなどを原因に挙げ、「黄炳瑞は2カ月ほど調査を受け、家族とともに政治犯収容所に送られた可能性が最も高い」とする消息筋のコメントを伝えた。

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金正恩氏が、このときの視察で激怒したのは北朝鮮も認める事実だ。朝鮮中央通信の報道によれば、金正恩氏はこの日、保健医療部門が「物質的・技術的土台を強化するためにほとんど努力せず、冬眠している深刻な状態」にあると指摘。朝鮮労働党が工場近代化などの方針を示して2年が経つにもかかわらず、「果たして何を改修して近代化したのか分からない」と述べ、現場への不満を露わにした。

金正恩氏のこうした怒りを受け、幹部らが「即興的に処刑された」とされる例はいくつもある。ただ米韓との対話が進んでいる今、外部の目を気にしてか、最近はそのような極端な行動は鳴りをひそめているようにも見える。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

黄炳瑞氏は1949年生まれとされ、公式の場に現れないのは健康を害しているためである可能性も残る。今後の動向を注視したい。