北朝鮮で、女性エリートの活躍が際立っている。筆頭は金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長だが、金正恩党委員長の妹であり、彼女の活躍自体は意外なものではない。

しかし、北朝鮮の対日・対米外交で女性が前面に立つのは、いままで見られなかった現象だ。7日にポンペオ米国務長官が訪朝した際には、金正恩氏との昼食会に、対米外交の担当者である金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長(統一戦線部長)に加え、金聖恵(キム・ソンヘ)統一戦線部策略室長も同席したとみられる。金聖恵氏は7月、ベトナムで日本の北村滋内閣情報官と極秘接触したとされる人物だ。

彼女にも増して目立っているのが、崔善姫(チェ・ソニ)外務次官だ。今月に入り、中国とロシアを訪問。中国の孔鉉佑外務次官、ロシアのイーゴリ・モルグロフ外務次官と相次いで会談し、9日にはモスクワで3者会談を行った。米国との非核化交渉で両国の支援を取り付けるのが目的と見られ、まさに国運を背負った重要任務と言える。

北朝鮮で政治的に重要なポジションに立った女性としては、金日成主席の後妻である金聖愛(キム・ソンエ)氏や、彼の長女で金正日総書記の実妹である金慶喜(キム・ギョンヒ)氏が知られる。また一般的には知られていないが、金正恩氏の異母姉である金雪松(キム・ソルソン)氏が一時、北朝鮮の人事と政務を一手に掌握する党組織指導部長の要職にあったとも言われる。

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しかしこの3人は、いずれも金王朝のメンバーだ。それ以外で出世した女性としては、崔善姫氏が最高なのではないだろうか。

世界の注目が集まる人物だけに、彼女にも色々な噂がある。たとえばある情報通の脱北者は、次のように語っている。

「チェ氏は、崔永林(チェ・ヨンリム)元総理の養女で、朝鮮労働党に入党した際には、金正日総書記が保証人となったほどのエリートです。北京とマルタに留学経験があり、英語も堪能。もの静かなインテリですが一時期、平壌の上流階級で噂の的になりました。既婚の身でありながら、現外相の李容浩(リ・ヨンホ)氏と男女関係にあったようなのです」

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また、別の脱北者は、「崔善姫氏の本当の父親は崔賢(チェ・ヒョン)元人民武力部長だ」と語る。崔賢氏は金日成氏の抗日パルチザン時代からの戦友だ。その一族は北朝鮮において、金王朝に次ぐ「名門」とも言える。崔善姫氏が本当に崔賢氏の娘であるなら、彼女の出世ぶりも「なるほど」と思えるものだ。

ちなみに、党副委員長の崔龍海(チェ・リョンヘ)氏は崔賢氏の息子だ。「変態性スキャンダル」などのために失脚させられながら復活できたのも、父親の威光のおかげと言われる。

(参考記事:美貌の女性の歯を抜いて…崔龍海の極悪性スキャンダル

いずれにしても、崔善姫氏をはじめとする女性陣の活躍は、かつての北朝鮮では見られなかったものだ。男尊女卑の悪習が色濃く残る北朝鮮において、この部分に関しては、金正恩政権下での「前進」を評価することができる。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

高英起(コウ・ヨンギ)

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1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記