地元民の怨みも募る、金正恩氏「恐怖写真」の現場

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北朝鮮の最高峰・白頭山(ペクトゥサン)の麓に位置する両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)郡は、風光明媚な景勝地だ。先月20日には、南北首脳会談のため訪朝した韓国の文在寅大統領一行も訪れた。北朝鮮の、有力な観光資源のひとつと言えるだろう。

実際に金正恩党委員長は、東海岸の「元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区」とともに、三池淵の開発に最も力を入れている。しかし北朝鮮においては、国家が注力する建設プロジェクトであるほど、住民の犠牲も多大となる傾向がある。

韓国のニュースサイト、リバティ・コリア・ポスト(LKP)によれば、過酷な任務を課せられた三池淵の住民からも、怨嗟の声が上がっているという。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信や朝鮮労働党機関紙の労働新聞は10日、金正恩党委員長が中国との国境地域にある両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)郡の建設現場など各所を視察したことを大きく報道。同時に、重大な事故の発生を予感させる「恐怖写真」を公開した。

(参考記事:金正恩氏の背後に「死亡事故を予感」させる恐怖写真

そして「やはり」と言うべきか、この現場近くで深刻な事故が発生していたことがわかった。両江道のデイリーNK内部情報筋によると、道内の恵山(ヘサン)近郊で、大量の建設物資を積んで三池淵(サムジヨン)に向かっていた貨物列車が転覆。複数の重傷者が出ていたのだ。

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事故原因については、鉄道が完成間もないため路盤が十分に固められておらず、崩壊したのが原因ではないかとささやかれた。北朝鮮では「速度戦」の名の下に、無理な工期のごり押しによる手抜き工事が横行。また、安全設備がないことがほとんどで、死亡事故が頻発している。

この話が、金正恩氏の耳にも入ったのだろうか。LKPによると、8月中旬に再び現場を訪れた金正恩氏は路盤工事のやり直しと、郡内に6つある中小型水力発電所の改修を命じたという。

これが日本であれば「どのゼネコンが受注したんだ?オイシイ話じゃないか」となるかもしれないが、北朝鮮ではそうは行かない。工事に動員されるのは、多くが地元住民なのだ。しかも、ろくに手当ても支払われないうえに、満足な装備もない。

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さらに、北部山間地帯である両江道は、寒さも厳しい。すでに現地の最低気温はマイナス6度であり、これからますます寒くなる。装備もないまま、凍てついた地面と格闘せねばならない住民の労苦は想像を絶する。

金正恩氏は、政策の進め方を間違えているのではないか? 非核化を本気で進めるのなら、いずれ三池淵の開発に外資を誘致する道も開ける。開発は、それからでも遅くはなかろう。徒に国民に苦労を強いる北朝鮮の指導者の考えは、いまひとつ理解できない。