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社会主義計画経済の破たんによって、なし崩し的な市場経済化が進む北朝鮮では、所得格差の拡大も激しい。それによる社会秩序の混乱も深刻で、遂には富者と貧者の間での「臓器売買」までが闇で行われるようになっているようだ。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、両江道(リャンガンド)で8月下旬、2人の女性の間で臓器売買が行われたという。現地の情報筋はRFAに対し、次のように語っている。

「8月、道内在住の貧しい50代の女性が、密輸で財を成したトンジュ(金主、新興富裕層)の女性に腎臓の片方を提供する出来事があった。移植手術はトンジュから裏でカネを受け取った恵山(ヘサン)の病院で行われたのだが、提供者の女性が副作用で重体に陥ったことで、この事実が世の知るところになった。トンジュの女性が提供者に腎臓の対価として差し出したのは、個人農耕地30坪だったということだ」

北朝鮮国内の食糧事情はかつてと比べ改善しているが、庶民が食べていくのは相変わらずたいへんだ。市場で食べ物を買う現金収入を得るために、売春などの手段に走る人々も少なくない。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

それが遂には、個人間で「臓器売買」が行われる段階に至ってしまったということだ。

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北朝鮮国内からは以前にも、臓器密売の情報が伝わっていた。

北朝鮮の孤児院は非常に劣悪な状態にあり、少女への性的虐待事件も多発しているが、そこを舞台に臓器密売が行われていたとする内容だ。

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また、2016年には咸鏡北道(ハムギョンブクト)において、17人もの子どもが相次いで失踪した。このとき、死体がみつかったのは1人だけだったこともあって、「臓器密売組織に誘拐されたのではないか」との話が出回った。

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ただ、こちらはあくまで「噂」であり、当局の調査などによって裏付けられた話ではなかった。前出の情報筋は、「今回、重体に陥った女性が死亡した場合、司法機関が調査に動く可能性があり、病院やトンジュの女性にどのような処分が下されるか注目される」と語っている。しかし同時に「すべてにカネが優先する今のわが国では、腎臓の提供者だけがかわいそうな結果になるのでは」とも。

北朝鮮社会が抱える闇は、日増しに暗黒の度合いを増しているのだ。

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高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

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