北朝鮮に「拘束された外国人」が強制された「屈辱会見」

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今月、北朝鮮を観光中に拘束され国外追放処分になっていた杉本倫孝氏が、28日午後8時前、日本に帰国した。健康状態に問題はないと伝えられており、まずは幸いである。

拘束された時の状況や、北朝鮮の目的について分析するには、当面は本人の証言が待たれるところだ。いずれにせよ、北朝鮮が同氏の身柄を何らかの政治的な目的に利用しようとした可能性は小さくない。

中朝国境地帯では2013年から、韓国人の宣教師らが姿を消し、間もなく北朝鮮の平壌で「スパイ行為を働いた」などと告白会見をさせられる事件が相次いでいる。たとえば2015年7月30日には、韓国系カナダ人牧師のヒョンス・リム氏が会見。「北の体制を覆し、宗教国家を建てるための拠点を築くため」18年間にわたり入国を繰り返してきた、などと話した。

しかし、世界でも最も過酷な思想統制を行ってきた北朝鮮で「宗教国家」をつくるなど、あまりに荒唐無稽な話だ。リム氏は北朝鮮の工作員に拉致されるかおびき寄せられ、秘密警察による「作文」を読まされたと見るのが理に適っている。

実際、かつて北朝鮮に43日間にわたって拘束された人物は、「性拷問」のビデオを撮られ、それを公開すると脅された事実を証言している。リム氏には相当の「威迫」が加えられたはずだ。

(参考記事:「北朝鮮で自殺誘導目的の性拷問を受けた」米人権運動家

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直接的な拷問がなくとも、北朝鮮が自国民に残忍な拷問を加えていることは広く知られており、拘束された外国人は恐怖を感じずにはいられないだろう。

もっとも、同様の会見で発表された「作文」の中には、すべてが完全な作り話であるとは限らないものもある。

北朝鮮は同年3月、韓国人男性2人の拘束を発表し、「韓国ためスパイ活動をしていた」などとする“自白会見”を行わせている。

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彼らは韓国の国家情報院(国情院)の求めに応じ、「有事の際に韓国軍が北朝鮮に浸透する際の取組みを『花豚事業』のコードネームの下に支援した」などと告白。

それに加えて、国情院の偽装活動拠点として中国・丹東にある企業や飲食店の名前を複数挙げている。

その後、それらの飲食店などは深刻な風評被害を受けているようだが、実際のところ、名前を挙げられた店の中には本物の国情院の秘密拠点が含まれているとされているのだ。

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これまで、中国当局は北朝鮮工作員の国内での活動を黙認してきたとされており、外国人を拉致するのも韓国の工作拠点を暴くのも、思いのままだったのかもしれない。

その後、中朝関係が悪化したことにより、こうした工作にも制限が加えられた可能性がある。だが今年に入り、中朝関係は劇的に改善した。米韓との対話路線を取る北朝鮮が今、外国人にめったなことをするとも思えないが、利用される口実を与えぬよう、念のための注意は必要だろう。