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金正恩党委員長は昨年12月、朝鮮労働党第5回党細胞委員長大会での演説で「非社会主義的現象を根絶やしにせよ」と指示した。これを受け、北朝鮮当局が今年初めから非社会主義的現象の取り締まりを行ってきた。

非社会主義的現象とは、文字通り北朝鮮が標榜する社会主義の気風を乱すあらゆる行為を指す。たとえば賭博、売買春、違法薬物の密売や乱用、韓国など外国のドラマ・映画・音楽の視聴、ヤミ金融、宗教を含む迷信の流布などなどだ。

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ここには網タイツ、花柄のストッキング、アルファベットのプリントされたTシャツの着用などといった「社会主義気風を乱す退廃的な服装」や、「色情的な踊り」(K-POP風のダンス)なども含まれる。

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韓流ドラマやデート、ダンスの取り締まりならまだしも、市場での商売なども規制され、生活に困窮する人が続出したことから、各地で国民が抗議する事態となったことを受け、両江道(リャンガンド)など一部地域では取り締まりが事実上の中止に追い込まれていた。

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しかし、9月9日の建国記念日(9.9節)を前にして、当局は再び非社会主義の取り締まりに乗り出したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、当局は「9.9節を迎え、社会主義生活様式にそぐわない非社会主義現象を根絶やしにせよ」との特別指示を下した。工場、企業所、人民班(町内会)では、政治講演会や会議が開かれ、「異色的な服装と髪型をして歩く現象を徹底して根絶やしにするための殲滅戦を強く繰り広げよう」という文書が配られた。

非社会主義的現象は、主に若者の間で見られるので、道、市、郡の青年同盟が取り締まりの先頭に立っているとのことだ。

情報筋は「前にもこのような取り締まりが何度も行われたが、何も変わらなかったので、今回は『殲滅』という強い表現を使い、取り締まりを強めているようだ」と説明した。実際、違反者への処罰も強化されている。

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一方、両江道の情報筋は、宣伝要員が「9.9節の行事に外国人が大勢やってくるが、一部の住民の行為でわが国のイメージが悪くなることは絶対にあってはならない」との理由で、通りや公共の場所で「非社会主義的現象を根絶せよ」との宣伝活動を行っている。

これに対して「こんな行事は今に始まったことではないのに、なぜ国民を痛めつけるのか理由がわからない」「こんなことなら行事なんてやめてしまえばいい」との不満の声が上がっているという。

情報筋が言っているように、このような風紀取り締まりは、効果を上げた試しがない。

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北朝鮮における取り締まりというものは、取締官がワイロをせびるネタにしかならず、一般庶民は、取り締まりの嵐がいつ過ぎ去るのか不安に思い当分はおとなしくしているだろうが、ほとぼりが冷めればまた今までのように非社会主義、反社会主義を満喫するだろう。

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高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記