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筆者は9日付の本欄で、北朝鮮の金正恩党委員長の身辺に異変が起きた可能性を指摘していた。金正恩氏は毎年7月8日、祖父・金日成主席の命日に際して錦繍山(クムスサン)太陽宮殿を参拝してきたのに、今回は遂にそのニュースが出て来なかったからだ。

韓国の国家情報院(国情院)は以前、金正恩氏について「パーティー狂いで不摂生」であるなどとして、健康不安説を報告していた。そういったこともあり、金正恩氏の動静には敏感にならざるを得ない。

(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙

「飛ばし屋」の噂

金正恩氏はまた、韓国の文在寅大統領に自ら提案した南北統一バスケットボール大会(4~5日・平壌)にも顔を出さず、今月6~7日に訪朝したポンペオ米国務長官とも会っていない。

金正恩氏側近である金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長は5日、バスケ選手団を引率して訪朝した韓国の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相に対し、金正恩氏がバスケ大会を観戦できない理由を「地方視察中だから」と説明したとされる。結局、7月10日に両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)郡を視察したことが報道され、金正恩氏の無事は確認された。

金正恩氏の視察報道では日時が明らかにされないのだが、通常は翌日にニュースが流されていると見られている。金英哲氏の「地方にいる」発言から5日も経って報道されたのは異例と言える。

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そう思っていたら、金正恩氏の専用機が同じ頃、両江道の恵山(ヘサン)飛行場に緊急着陸していた可能性のあることがわかった。デイリーNKは17日までに、恵山地域の住民から「今月初め、いきなり白い飛行機が上空から降りてきたと思ったら、携帯電話と有線通信網がすべてつながらなくなった」との証言を得た。専用機は、金正恩氏を乗せて三池淵飛行場に向かう途中、何らかのトラブルに見舞われ、恵山飛行場に緊急着陸した可能性が高い。

金正恩氏の専用機「チャンメ1」号は1980年代に旧ソ連から導入されたもので、老朽化が指摘されている。特に長距離飛行が不安視されており、シンガポールでの米朝首脳会談に際しては、金正恩氏は中国から提供された要人専用機で現地入りした。

(参考記事:金正恩氏と北朝鮮の「航空機事情」…かつて空軍を海外派兵

今や、各国の人々は望むと望まざるとにかかわらわず、米国との非核化対話に乗り出した金正恩氏に、何らかの期待を寄せざるを得ない状況になっている。しかし、独裁者として君臨する金正恩氏の身に何かあれば、情勢はただちに暗転しかねない。

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健康不安であれ専用機墜落などの事故であれその他のトラブルであれ、金正恩氏が抱えるリスクは、今や国際社会のリスクにもなってきている。

(参考記事:不安で電車にも乗れない…金正恩氏がおびえる「国内の敵」

老朽化した専用機の安全性のみならず、北朝鮮国内で「飛ばし屋」と噂される金正恩氏のクルマ好きもまた、世界に新たな混乱をもたらす問題の「タネ」になりかねないのだ。

(参考記事:金正恩氏の「高級ベンツ」を追い越した北朝鮮軍人の悲惨な末路

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記