北朝鮮は、極端に娯楽の少ない国だ。そのため、特に若者たちは、自分たちなりに工夫をしなければならないのだが、そこにはそれなりのリスクもある。

北朝鮮では、「非社会主義的現象」の取り締まりと称して風紀取り締まりキャンペーンが繰り返されており、少しでも社会規範から逸脱したと見なされたら、とんでもない罰を下されることになる。

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ちなみに非社会主義的現象とは、文字通り北朝鮮が標榜する社会主義の気風を乱すあらゆる行為を指す。たとえば賭博、売買春、違法薬物の密売や乱用、韓国など外国のドラマ・映画・音楽の視聴、ヤミ金融、宗教を含む迷信などなどだ。もちろん、その他の刑事事犯も含まれる。

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しかし実際のところ、北朝鮮には社会主義の気風などほとんど残っていない。1990年代に計画経済と配給システムが崩壊したために、その後はなし崩し的に市場経済化が進行。その過程で、売買春や薬物の乱用が、資本主義国も真っ青な勢いで蔓延した。

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男女の出会いの機会も、日本や韓国に比べるとごく限られており、少ないチャンスで意中の異性を射止めなければならない。

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そんな中、今月の4日と5日に首都・平壌の柳京鄭周永体育館で開かれた、北朝鮮と韓国による南北統一バスケットボール大会を、若者らは大いに楽しみにしていたはずだ。ところが北朝鮮当局は、そんな華やいだ気分に水を差す、とんでもない指示を下した。

大会に合わせて北朝鮮当局は、平壌市民に対して服装に気をつけることと、野外で男女が踊らないようにとの指示を出したのだ。

米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の平壌情報筋によると、平壌市内の人民班(町内会)会議で、次のような指示が伝えられた。

「北南統一バスケットボール競技が行われる間、明るくきれいな服装にして、南朝鮮(韓国)に平壌市民の文化レベルを見せつけよう」
「男女がグループになってピクニックでビールを飲み踊って歌うという資本主義遊び人風は、徹底的に排撃せよ」

別の情報筋によると、今月初めから市内の大学生に対して大学当局から「大会中は、制服をきちんと着て、夜に平壌駅前、高麗ホテル前の通り、大同江の遊歩道での恋愛(デート)は根絶せよ」との指示が伝えられた。

各大学の青年同盟は糾察隊を立ち上げ、通りで朝から晩まで学生の行動や動線を監視した。これは、学生がバスケや韓国人見たさに体育館に近づくことを未然に防ぐための措置だと情報筋は指摘した。

4月に行われた南朝鮮芸術団の公演を多くの学生が見たがったが、実際に見ることができたのは選びに選びぬかれたごく一部の学生だけで、えこひいきに対する金正恩党委員長への不満が高まった。

今回のバスケ大会も見られなかった学生たちからは、「今の北朝鮮がやっていることは、朝鮮王朝時代の鎖国政策と何も変わらない」との批判が上がっているという。

(参考記事:わざわざ「ガールズグループ」に会いに行った金正恩氏の危険な試み

金正恩氏は日頃、「これからは若者だ」として青少年を重視する発言を行っているのだが、そのくせ、若者の気持ちが読めないところがある。

(参考記事:金正恩センスの制服「ダサ過ぎ、人間の価値下げる」と北朝鮮の高校生

本人がまだ34歳と若いだけに、青年層とのコミュニケーションがうまくできなければ、将来的に国家運営にまで支障が出てきてしまうのではないだろうか。

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高英起(コウ・ヨンギ)

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1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記